You’re viewing a text-only version of this website that uses less data. View the main version of the website including all images and videos.
行方不明の潜水艇、安全性に懸念 5年前に指摘
大西洋で「タイタニック」の残骸を見に潜航中に行方不明となった潜水艇「タイタン」について、運航会社「オーシャンゲート」の元従業員が2018年の時点で、安全面で問題がある可能性を指摘していたことがわかった。捜索は21日夜(日本時間22日午前)も続いている。
米裁判所の文書によると、オーシャンゲートの海洋オペレーションのディレクターだったデイヴィッド・ロクリッジ氏が、検査報告書で懸念を表明していた。
検査報告書には、「重大な安全上の懸念を呼ぶ数多くの問題が指摘されていた」という。問題とされた中には、船体のテスト方法も含まれていたとされる。
ロクリッジ氏は、「タイタンが極限の深さに達すると、乗客に危険が及ぶ可能性を強調した」とされる。同氏は警告が無視されたと考え、オーシャンゲートの上司らとの会議を求めたが、解雇されたという。
オーシャンゲートは、ロクリッジ氏が秘密の情報を暴露したとして同氏を提訴。同氏は不当解雇だとして反訴した。この訴訟は和解が成立したが、詳細は明らかにされていない。
BBCはロクリッジ氏に取材を試みたが、コメントは得られなかった。
「実験的」手法への懸念
一方、海洋技術協会(MTS)が2018年3月にオーシャンゲートに送った書簡には、「オーシャンゲートが採用している現在の『実験的』アプローチは(中略)負の結果(軽微なものから壊滅的なものまで)をもたらす恐れがある」と記されていた。米紙ニューヨーク・タイムズがこの書簡を入手して報じた。
オーシャンゲートの広報担当は、ロクリッジ氏とMTSが提起した安全面での問題について、コメントを避けた。
同社が「実験的」だとするタイタンは、深海艇にはあまり使われない素材で作られている。船体(乗客が座る空間の周囲)はカーボンファイバー製で、エンドプレートはチタン製で、片方の端には小さな窓がある。
英ポーツマス大学講師のニコライ・ロターダム博士(海洋生物学)は、「深海潜水艇の人間を収容する部分は、典型的には、直径2メートルほどのチタン製の球体だ」と説明した。
深海の大きな水圧に耐えるには、極めて強力な素材が必要だ。カーボンファイバーは、チタンや鋼鉄より安価で、強度も非常に大きい。だが、タイタンのような深海艇で試されたことはほとんどない。
のぞき窓についても
裁判所の文書では、ロクリッジ氏は船体が適切にテストされていないと主張。タイタンの小型模型を使った圧力テストで、カーボンに欠陥が見つかったとした。
ロクリッジ氏はまた、タイタンのガラス製ののぞき窓についても、素材メーカーは深度1300メートルまでの使用しか認証していないとした。
オーシャンゲートは2018年12月の声明で、タイタンが深度4000メートルの潜水を完了し、「オーシャンゲートの革新的エンジニアリングと、カーボンファイバーとチタンの船体構造が有効であることを完全に証明した」としていた。
同社のストックトン・ラッシュ最高経営責任者(CEO)は2020年、米テクノロジー関連のニュースサイト「ギークワイア」のインタビューで、タイタンをテストしたところ、船体に「繰り返し疲労の兆候が見られた」と述べていた。
<関連記事>
タイタンは形状も独特だ。
深海潜水艇は球形が一般的だ。そうすることで、どの箇所でも水圧を均等に受けるられる。
ところが、タイタンはチューブのような形をしており、水圧が均等に分散されない。
「タイタンは、研究で使われる潜水艇とはかなり異なる」とロターマン博士は言う。
「しかし、複合素材を使ったこのデザインが構造上の弱点になっているかどうかは、エンジニアが判断することだ」
認証されていなかった
裁判所の文書では、ロクリッジ氏はオーシャンゲートに対し、タイタンが検査と認証を受けるよう強く促したとしている。
潜水船は、アメリカやノルウェーにある認証機関によって、認証または「クラス分け」を受けることができる。強度や安全性などが一定の基準を満たしている場合に認証される。
しかし、潜水船の認証は義務ではない。
タイタンは認証もクラス分けもされていない。オーシャンゲートは2019年のブログ記事で、「オーシャンゲート設立時の目標は、有人潜水艇の設計と運用において、合理的な最高レベルのイノベーションを追求することだった。定義上、イノベーションとは、すでに受け入れられているシステムから外れることだ。しかしこれは、オーシャンゲートが適用される基準を満たすという意味ではなく、イノベーションはしばしば、業界の既存のパラダイムから外れることを意味する」としていた。