小泉防衛相、防衛力強化は戦争の抑止に「極めて重要」 BBC単独インタビュー

Published
この記事は約 9 分で読めます

森来実(もり・くるみ)東京特派員

日本の小泉進次郎防衛相は17日、BBCのインタビューで、日本は「自前の防衛力をさらに強化」しなければならないと語った。そして、第2次世界大戦以降の日本を定義してきた平和主義的な姿勢を再検討する必要性を強調した。

日本の防衛力の強化に加え、「アメリカとの同盟関係を強固にする。そして同志国との連携を広げていく。こういった重層的な抑止力をしっかりと広げていくことによって、決してこの地域に新たな戦争を起こさせない、このことが極めて重要な時代」だと、小泉氏は述べた。

小泉氏は、数十年続いてきた武器輸出規制の緩和など、日本の防衛政策における最近の変化についても語った。

日本で戦後に制定された「武器輸出三原則」は武器輸出を原則禁止していたが、約50年ぶりに緩和され、アメリカやイギリスを含め、防衛協定を結ぶ17カ国に殺傷能力のある兵器を輸出または移転できるようになった。

都内の防衛省での対面インタビューで、小泉氏は「オーストラリアが日本の護衛艦を採用して、そして今、フィリピンとも日本の自衛隊の中古の護衛艦の話が進んでいます。インドネシアとも具体的な話が始まりました。そして、ニュージーランドも日本の護衛艦に関心を持っています」と語った。

そのうえで、「この具体的な装備品、アセットを共有するインド太平洋の姿は今までには見られなかったもので、こういったことについてもしっかり前に進むことによって、日本が日本としてできる地域のための貢献、これはアメリカとの関係ではなくて、日本としてできることとして新たな役割があると思っています」と述べた。

現政権にとって防衛は最優先課題の一つで、歴史的な防衛費増額を政策に掲げている。緊張が高まりつつある地域において、こうした改革が必要だと政権は主張している。

近年、中国は世界的に強大な存在として台頭している。北朝鮮は日本上空を通過する弾道ミサイルの発射実験を行うなど、核開発の野心に衰えを示していない。

昨年10月に首相に就任した高市早苗氏は、戦争放棄の平和主義を定めている日本国憲法第9条の改正も推し進めている。第9条の第1項は「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定める。第2項は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする。

小泉氏は、戦後の80年間で地域情勢が変化したことを理由に、憲法第9条の改正を支持する立場を表明した。

「これは防衛大臣という立場というよりは、一議員としての立場になりますけど、戦後日本は一度も憲法改正をしていません。この戦後の中で、これだけ安全保障の環境が変わってきている中で、その安全保障環境にしっかりと適応して、また日本がこれからも平和であり続けるためには、自衛隊のあり方、そして国民の皆さんからも自衛隊が明確な位置づけとしてしっかりと見られること、自衛隊が誇りと名誉を持って任務に当たることができて、今の厳しい安全保障環境の中でも、決して揺るがぬ防衛力を持つこと、そういったことについても変わるべきところは変えなきゃいけない、そういった思いです」

中国とは「対話を重ねる」

中国は間違いなく、日本にとって最も難しい相手だ。中国は台湾を自国の領土の一部とみなしているが、台湾は自治権を有する、中国とは異なる島だとしている。台湾をめぐる中国側の主張は、長らく緊張が続いてきた日中関係に新たな火種をもたらしている。

中国が釣魚島と呼ぶ尖閣諸島の島々は、台湾の方へ連なり、「第一列島線」(台湾、フィリピン、日本を含む島々を結ぶ台湾の安全保障上の戦略ラインを形成しているこれは、中国沿岸の水域とより広範な太平洋との間にある、戦略的な封じ込めの障壁とされてきた。しかしこの1年、中国の空母がこれらの島々の外側で活動していることが、時折確認されている。

日本の防衛省は、閣議に提出した最新の防衛白書で、中国の軍事的な動きを「最大の戦略的な挑戦」と位置づけた。同省は、今後発表される年次報告書でも同様の見解を改めて示すとみられる。

小泉氏は5月31日、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」で、日本が「新型軍国主義」に取り組んでいるという中国の主張に反論し、国際社会にとって「重大な懸念事項」となっているのは、実際には中国と、同国による兵器の「大量保有」だと主張した。

しかし、今回のインタビューでは、日本として中国との対話継続を望む考えを強調した。

「私は(中国の)カウンターパート(対等の立場にある相手)と昨年11月に会いました。お互いに意見が違うところもあるからこそ、対話を重ねようと、そういった思いも伝えました」

「残念ながら最近ではなかなか直接のコミュニケーションの機会はありませんが、シャングリラ・ダイアローグで私が申し上げた通り、日本は常に対話にオープンです。これからもその対話にオープンだというメッセージを届け続けて、必要な機会にあらゆる場で対話の場が設けられることを私は期待をしています」

自衛隊の明記は「最後は国民の判断」

こうした防衛政策の変更を模索した日本の指導者は、高市氏が初めてではない。1950年代には岸信介首相(当時)が、日本はもっと普通の軍事的姿勢を取るべきだと主張した。小泉氏の父で、2000年代初頭に首相を務めた小泉純一郎氏も、第9条の見直しを含む憲法改正を支持していた。

近年では、岸元首相の孫である故・安倍晋三氏も首相在任中、 国権の発動たる戦争を放棄し、戦力を保持しないことを規定した憲法第9条の「平和条項」の改正を提唱するようになった。

こうした動きは高市政権下で加速し、過去数十年で最大規模の反戦デモが起きている。

現在45歳の小泉氏はBBCに対し、日本は自衛隊の地位を明確にする必要があるとも語った。法的にも政治的にも、日本は自衛隊を軍隊とは呼んでいないが、運用上は軍隊として機能している。

「自衛隊が誇りと名誉を持って任務に当たることができて、今の厳しい安全保障環境の中でも決して揺るがぬ防衛力を持つこと、そういったことについても変わるべきところは変えなきゃいけない、そういった思いです」と、小泉氏は付け加えた。

自衛隊を憲法に明記したり、その任務や役割を拡大させたりすることについては、憲法第9条が定める平和主義的な立場を脅かすおそれがあるとの批判がある。防衛をめぐる政府の目標を達成する上で、自衛隊が憲法に明記されていないことが妨げになることはないと主張する人もいる。

公益財団法人国際文化会館地経学研究所の主任研究員で、軍事戦略や防衛政策を研究する小木洋人氏は、次のように指摘する。「中国に対する防衛作戦のために第9条を改正する必要はありません。したがって、これは軍事的合理性に基づくものというよりは、むしろ政治的アジェンダと言えます」。

例えば、日本が管理しているものの、中国が領有権を主張する南方の島々に脅威が及んだ場合でも、現行憲法で十分対応できると、小木氏は考えている。「沖縄や九州地方にある米軍基地への攻撃は、日本に対する直接的な軍事攻撃と解釈されるべきです」。

小泉氏は、自身が所属する自民党が憲法改正を推進しているものの、「最後は国民の皆さんの判断」に委ねられると述べた。

「日本は最後は国民投票の中で憲法改正をすべきかどうかを決める国です。そして、それをどのようなタイミングで、どのような環境が整ったら、国民の皆さんに判断をしていただくかも。これはその時に大きな政治的な判断があると思います」

防衛費増額と日本の役割

中国との関係は、とりわけ日本のようなアメリカの強固な同盟国にとっては、バランスを保つのが難しい問題でもある。

第2次世界大戦後に結ばれた日米安全保障条約は、今もなお日本の防衛の礎となっている。日本には世界最大規模の在外米軍が駐留しており、約5万人の米兵が国内に展開している。

しかし最近では、アメリカの指導者たち、とりわけ第2次トランプ政権は、日本政府が駐留米軍の維持費を負担すべきだと強調し、アメリカの同盟国は自国の防衛費をさらに増やすべきだと示唆している。

ピート・ヘグセス米国防長官は先月、シャングリラ・ダイアローグでの基調講演で、「裕福な国々の防衛にアメリカが補助金を支給する時代は終わった」と述べている。

安全保障をめぐる強硬な姿勢で知られる高市氏は、防衛費を国内総生産(GDP)の2%まで引き上げることを決めた。これは、戦後長らく、防衛費の基準とされてきたものの2倍にあたる。

日本は防衛費の増額分を、新型の対艦ミサイルや、陸上および水中に配備される無人ドローンに充てる計画だ。

一部のアナリストは、造船や電子システムといった日本の産業が、世界の防衛市場において一層競争力を高めていく可能性があると指摘している。

米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、少なくとも主に防衛分野に特化した真の日本の防衛企業が出現することが、成功の鍵になるという。

一方、とりわけ中国に対しては、日本は予算拡大や戦略文書の更新、抑止力だけでは不十分で、より大胆な改革によって自衛隊の機動性や適応力を高める必要があると指摘する専門家もいる。

小泉氏は、アメリカ側の考えに沿って、日本がこの地域の安全保障の維持において重要な役割を果たすべきだと考えている。

「日本が日本としてできる地域のための貢献、これはアメリカとの関係ではなくて、日本としてできることとして新たな役割があると思っています」

「自分たちの国は自分たちで守る」と、小泉氏は述べた。