米コメディアンのビル・コスビー氏を釈放 性的暴行罪の実刑判決を破棄

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アメリカの元国民的コメディアンで、性的暴行罪で実刑判決を受け服役していたビル・コスビー受刑者(83)について、ペンシルヴェニア州最高裁は30日、判決を覆した。コスビー氏はこの決定の数時間後、釈放された。

州最高裁は、検察による「裁判手続き上の違反」があったとした。ただ、今回の決定は異例だと認めた。

コスビー氏は、元バスケットボール選手のアンドレア・コンスタンド氏に薬物を使い性的に虐待したとして、2018年に禁錮3~10年の実刑判決を受けた。当時高まっていた、セクハラ被害者を支援する「#MeToo(私も)」運動の画期的な出来事とされた。

その後、同州フィラデルフィア近郊の州刑務所で2年以上服役してきた。

釈放されたコスビー氏は、ほどなくして自宅前に到着すると、待ち構えるメディアに向かってゆっくりと歩いた。体が弱っているように見えた。

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コスビー氏は発言せず、弁護団や広報担当のアンドリュー・ワイアット氏がメディアの質問に答えた。

「この暑い日に、熱い決定が私たちに出た」とワイアット氏は述べた。

「コスビー氏は常に、著名人としての地位と彼の名前を、女性を高めるために使ってきた(中略)。FBI(連邦捜査局)に毎日監視されている男性が、どうやって女性をレイプし、薬物を与えられるというのか(中略)。しかも黒人だというのに」

記者会見の映像からは、コスビー氏のファンが声援を送っているのが聞こえた。

コスビー氏は1980年代のテレビ番組「コスビー・ショー」の出演で最も知られ、「アメリカのお父さん」と呼ばれた。

後年、数十人の女性がコスビー氏から性的暴行を受けたと公に発言した。ただ、刑事裁判になったのはコンスタンド氏の1件だけだった。

裁判所の決定

州最高裁の決定の文書は79ページに及び、説明は複雑だ。

裁判所は、ブルース・キャスター元州検察官の同意文書について指摘。文書では、コンスタンド氏が起こした民事訴訟でコスビー氏が証言すれば、キャスター氏はコスビー氏を訴追しないとしていた。

裁判所はまた、事件と関係ない告発者らの証言が、裁判に不当な影響を及ぼしたと判断。

「コスビーを完全に以前の状態に戻す救済策は1つしかない。彼を釈放し、この事件に関する将来のいかなる訴追も禁止することだ」とした。

「この救済策が厳しく、まれなものであることに異議はない。だが、ここで正当と認められた」

コスビー氏の広報担当のワイアット氏は、声明で裁判所に感謝した。

「これこそコスビー氏が闘い求めてきた正義だ。明かりが見えた」

「彼は取引し、刑事免責を得た。そもそも起訴されるべきではなかった」

さまざまな反応

裁判所の決定を受け、「コスビー・ショー」でコスビー氏の妻を演じた俳優フィリシア・ラシャド氏は、「恐ろしい間違いが正された。司法の誤りが修正された!」とツイートした。

ケヴィン・スティール検察官は、「(コスビー氏は)陪審によって有罪とされたが、犯罪事実とは無関係の手続きの問題で自由の身となった」とする声明を発表

「この決定によって、性的暴行の被害者が届けを出すのを控えないことを望む(中略)。私たちは今も、法を超えた人はいないと信じている。裕福で有名で有力な人であってもだ」

コスビー氏を告発した30人以上の代理人を務めたグロリア・オルレッド弁護士は声明で、今回の決定を「破壊的」と表現。そのうえで、コスビー氏の行為を正当化するものではないとした。

また、「彼の刑事裁判で勇敢に証言した人たちに特に同情する」と付け加えた。

コスビー氏が問われたのは

コスビー氏はコンスタンド氏の性的暴行事件で、3件の罪状について有罪とされた。

コスビー氏より数十歳年下のコンスタンド氏は、フィラデルフィアにあるテンプル大学で働いていた2002年、コスビー氏と出会った。メンターとして仰いでいたという。

コンスタンド氏は裁判で、2004年にコスビー氏の自宅で、薬物を使われて性的に虐待されたと証言した。

コンスタンド氏は2005年に警察に暴行の被害を届け出たが、キャスター元州検察官は起訴しなかった。

コンスタンド氏はその後、コスビー氏を性的暴行と名誉毀損で訴え、2006年に和解した。和解の内容は公表しないことで合意した。

2014年と2015年に、多数の女性がコスビー氏から同様の被害を受けたと訴え出た。当局は多くの事案は時効により立件できないとわかっていたが、コンスタンド氏に関する事件について再捜査。12年の時効が成立する数日前に、起訴に持ち込んだ。

2017年の最初の裁判は、陪審が評決に至らず、評決不能裁判となった。

他の告発者らの証言は、2回目の裁判で採用され、検察はコスビー氏の女性を繰り返し襲う行動パターンを描き出した。