【米大統領選2020】 ロシアや中国、イランはどちらに勝ってほしい?

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ロシア政府は、ドナルド・トランプ米大統領に肩入れして「アメリカを偉大なままに」しようとするだろうか? 中国政府は、民主党の大統領候補ジョー・バイデン前副大統領を支援しているのだろうか?

11月の大統領選に向け、アメリカの情報機関ではこうした疑問が飛び交っている。当局高官は、ロシアと中国、イランが「秘密裏に、あるいは公然とした手を使って」アメリカの有権者を動かそうとしていると警告している。

また情報機関の考えでは、これら3カ国はそれぞれに目的と能力が異なるため、一緒くたにしてはいけないという。

一方で、こうした情報機関の報告にも精査の目が向けられている。9月には国土安全保障省の元情報部門高官が、「米大統領の印象が悪くなる」からロシアの選挙介入の脅威を過小評価するよう、上層部から指示されたと告発した。

大統領選まで1カ月を切った今、アメリカの有権者はこうした国について何を知るべきなのか?

ロシア

情報機関の見解

2016年の前回大統領選とその後の展開において、ロシアが大きな役回りを演じたことは知っているかもしれない。

簡潔にまとめると、アメリカの情報機関は、ロシアがトランプ氏に有利に働くよう有権者を誘導していたとみている。トランプ陣営とロシア当局の会談、ヒラリー・クリントン候補の選挙活動や民主党へのサイバー攻撃、アメリカ政府の有権者データベースへの攻撃、そしてインターネット上で偽情報や分断をあおる情報を拡散したことなどがあげられている。

今年9月には、共和党が過半数を占める米上院の委員会が、ロシアがトランプ氏勝利を望んでいたという見方を支持した。トランプ陣営は外国勢力の影響を受けやすい立場にあったと述べたものの、違法となる共謀の疑いがあるとまでは言及しなかった。

あれから4年がたち、民主党の候補はクリントン氏からバイデン氏に変わった。アメリカの国家防諜安全保障センター(NCSC)のウィリアム・エヴァニーナ長官はアメリカ国民向けの報告書で、ロシアは「あらゆる方法でバイデン前副大統領の名誉を傷つけようとしている」と指摘した。

連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官も、ロシアはアメリカ政治に介入し続けていると話し、2018年の議会選挙は「2020年の一大イベントに向けたドレス・リハーサルだった」と述べた。

ロシアは外国の選挙への介入を一貫して否定している。今年初めには政府報道官が、こうした疑惑は「真実とは程遠い、被害妄想の主張だ」と反論した。

トランプ氏の再選を望んでいるかどうかとは別に、ロシアが敵対国に混乱を起こして不安定化を図っているという分析もある。

欧州連合(EU)が今年発表した報告書では、EUの新型コロナウイルス対応を遅らせるため、ロシアが新型ウイルス関連のフェイクニュースを発信する活動を行っている疑いが指摘されている。ロシアはこの主張についても根拠がないとしている。

大統領候補の意見は?

バイデン氏はロシアをアメリカの「敵」と呼び、今後もロシアがアメリカ政治に介入し続けるなら「代償を支払うことになる」と警告している。

一方のトランプ大統領は、ロシアの介入疑惑を過小評価する発言を繰り返し、政権の情報専門家などと意見が食い違っている。

2018年にロシアのウラジミール・プーチン大統領と会談した際、介入疑惑についてアメリカの情報機関とプーチン氏どちらを信じるかという質問に、トランプ大統領は「プーチン大統領は(介入しているのは)ロシアではないと言った。ロシアが介入しなければいけない理由も分からない」と答えている。

その後、トランプ氏は言い間違えたと訂正した。

中国

情報機関の見解

トランプ政権の高官からは、ロシアよりも中国がアメリカ政治に脅威をもたらしているという声もある。

ウィリアム・バー司法長官は、「私は情報を見ている。それが私の結論だ」と述べた。これに対し米下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、「まったくのうそだ」と批判している。

エヴァニーナNCSC長官はアメリカの情報機関の見解として、「中国は言動が予測できないトランプ大統領には再選してほしくないと考えている」と説明した。

「中国はアメリカに政策的な基盤を作り、国益に反したり、同国に批判的な政治家に圧力をかけたりするために、影響力を拡大しようとしている」

この「影響力」と言う言葉が重要だ。米スタンフォード大学のサイバーモニタリングチームによると、中国は「コンテンツ制作企業や、『やらせ』の草の根運動を起こすコメンテーター、ソーシャルメディア上の偽アカウントや人格」といった洗練された手法で世論に影響を与えている。しかし、実際にどこまで準備を整えているかは不透明だ。

「中国はこれからも、過激な活動のリスクと利益を測り続けるだろう」とエヴァニーナ氏は話している。

こうした活動には大統領選以上に、中国の考え方を浸透させる目的があるのかもしれない。フェイスブックは先ごろ、中国とつながりのある150以上の偽アカウントを削除したと発表した。領有権が争われている南シナ海での中国の権益を強調するなど、同国の政策を支持する内容が多かったという。

中国は他国への内政干渉はしておらず、「興味も意志もない」としている。

大統領候補の意見は?

トランプ大統領は10月に入り、トランプ氏支持のウェブサイト「ブライトバート」が掲載した、「中国はバイデン当選を支持している」という記事をツイッターで引用した。

さらに、「中国はもちろんバイデンがいいだろう。私は中国から数十億ドルを奪って、アメリカの農家と財務省に配った。バイデンとハンター(バイデン氏の息子)が勝てば、中国がアメリカを支配することになる」と投稿した。

米中は現在、新型ウイルスから中国政府が香港で施行した国家安全維持法まで、さまざまな問題をめぐって緊張関係にある。

バイデン候補は、中国に甘いというトランプ氏からの批判をかわそうとしており、人権問題などに「厳しく」対応していくと約束している。民主党は、選挙に関してはロシアがもっとも攻撃的になっていると主張している。

イラン

情報機関の見解

エヴァニーナ長官は報告書の中で、イランはトランプ氏再選を望んでいないと指摘。トランプ氏が勝ては、「アメリカは引き続き、イランの体制変革に向けて圧力をかけてくる」とみていると述べている。

その上で、イランは「ソーシャルメディア上で偽情報を流したり、反米コンテンツを拡散するなど、インターネット上での影響」に注力しているという。

こうした情報機関の疑惑を裏付けるように、米マイクロソフトは先に、ロシアと中国、イランとつながりのあるハッカーが、大統領選の主要人物へのスパイ行為をしようとしていたと発表した。

マイクロソフトによると、イランからは「フォスフォラス」という名前のハッキンググループが今年5月から6月にかけ、ホワイトハウス高官やトランプ陣営スタッフのアカウントにアクセスしようとし、失敗したという。

イラン外務省の報道官は、マイクロソフトの発表は「ばかげている」と一蹴。「イランはホワイトハウスで誰が大統領になろうが興味がない」と述べた。

また、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」の報告書によると、イランは中東地域で覇権を築くといった国策を進めることに注力している。

「イランのデジタル政策によって拡散されているコンテンツのほとんどが、同国の世界に対する見方や外交政策と直接結び付いている。結果として、ロシアのような政治的な信念が薄い国と比べると、イランによる活動は特定しやすい」

大統領候補の意見は?

外国勢力からの影響、あるいは政策の面では、イランはロシアや中国ほど、大統領選の中で注目されていない。

トランプ大統領はこれまでイランに対して厳しい態度を取ってきた。核合意から離脱し、イラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を長年指揮してきたカセム・ソレイマニ司令官の殺害を指示した。

バイデン氏は、トランプ氏の対イラク政策は失敗したと指摘。CNNの取材では、「イランに厳しく接するスマートな方法がある」と話し、イランの中東を「不安定化させる活動」を抑制する一方で、「外交の道」を提供すると語った。

<解説> アメリカはどの国を最も恐れているのか……答えは人によって違う ――ゴードン・コレラ安全保障問題担当編集委員

アメリカ政府やソーシャルメディア各社は、2016年の大統領選ではロシアの介入への対応が遅れた。今回は誰も手をこまねいていないが、大統領選を取り巻く状況は変わっている。

SNS各社は、それぞれの活動を声高に宣伝している。アメリカの情報コミュニティーも定期的に報告書を発表している。

しかしこの問題の政治性はさらに深まっている。

民主党は、ロシアが介入しトランプ大統領を支援していると熱心に主張。一方、トランプ氏の支持者は、中国が再選を阻もうとしていると述べ、注目をそらそうとしている。

国家安全保障部門の高官は、危ない橋を渡っている。ロシアと中国(そして低レベルだがイラン)からの影響があると認めているものの、党派争いに巻き込まれる懸念から、その違いについては言及を避けている。

現時点では、ロシアによる介入は前回より秘密裏かつ組織的に行われているようだ。しかし今回の介入が、2016年に民主党の電子メールが大量にハッキング、漏えいされた時と同じ規模、同じ影響力であるとは限らない。

介入しようとしてくる勢力の戦術も進化している。偽の情報を作り出すよりも、アメリカ発のニュースや投稿を誇張する方を選んでいる。

さらに、選挙活動期間の終わりが近づくにつれ、選挙の手続きそのものの信頼性を損なおうとする動きなど、さらなる活動が見られるかもしれないという不安の声も上がっている。