【解説】 スターマー氏はなぜ辞任したのか、新指導者はどうやって決まるのか

画像提供, Reuters
イギリスのキア・スターマー首相が、与党・労働党の党首を辞任する意向を表明した。後任の党首が決まり次第、首相も代わる見通しだ。スターマー氏はなぜ辞めるのか。このあと、どのように新指導者が決まるのか。
なぜスターマー氏は辞任したのか
スターマー氏に辞任を求める圧力はしばらく前から高まっていた。支持率が低迷し、ピーター・マンデルソン前駐米大使の任命をめぐってスターマー氏の評価を落とす情報が明るみに出たことも影響した。
5月に行われた地方議会選挙は、スターマー氏にとって状況を好転させる最後のチャンスとされていたが、結果は労働党の惨敗だった。直後から、一部の閣僚や政務次官らが政権を離れる動きが相次いだ。
今月11日には、労働党の重鎮ジョン・ヒーリー国防相が、防衛予算をめぐって舞台裏で長引いていた政権内での対立から辞任を発表。スターマー氏の基盤はいっそう弱まった。
さらに、18日に行われたイングランド北西部メイカーフィールド選挙区の下院補欠選挙では、グレーター・マンチェスターのアンディ・バーナム市長が労働党の候補として大差で当選。下院議員に復帰し、党首選への立候補資格を得ることが決まった。これにより、党内ではバーナム氏を次の首相に推すムードがいっそう高まった。
スターマー氏は当初、党首の座への挑戦を受けて立つ姿勢を示していた。しかし先週末の熟慮で、自らへの党議員らの支持は不十分だとの結論に至り、辞任を決めた。
新党首はいつ選ばれるのか
労働党はまだ、新党首選出に関する正式な日程を発表していない。ただ、スターマー氏は辞任演説で、後任候補者は7月9~16日の間に、立候補に必要な支持を集める必要があると述べた。
党規約では、候補者は党下院議員81人の推薦と、634ある労働党の地方支部のうち32支部の推薦か、党と関係のある3組織(うち二つは労働組合)の推薦が必要となる。
この基準をクリアした下院議員が複数人いる場合、党員および労組の支持者らによる投票で勝者を決める。これは、議会が夏の休会を終えて再開する9月1日までに行われる。
ただ、そうした手続きは不要になるかもしれない。
バーナム氏はすでに党首選への立候補を表明している。必要な党議員らの推薦は十分に得られると広く見られている。
現時点では、他に立候補を表明した議員はいない。潜在的ライバルのウェス・ストリーティング前保健相は、スターマー氏の辞任表明の直後、自らは立候補せずにバーナム氏を支持する姿勢を示した。
新党首はすぐ首相になるのか
立候補者がバーナム氏だけの場合、同氏は党首選を経ずに自動的に労働党の新党首に就任する。
そうなればバーナム氏は、下院議員に復帰して1カ月もたたない7月中旬には、新たな首相になる可能性がある。
そのため、党議員らからはすでに、バーナム氏に対し、首相就任後の青写真を詳しく示すよう求める声が上がっている。バーナム氏はかつて閣僚として政権の一端を担った経験があるが、それから10年近くがたっている。
総選挙になるのか
労働党は下院で単独過半数議席を保有している。そのため、党首選で勝利した人物が自動的に次の首相になる。首相就任に総選挙は必要ない。
これは、イギリスでは首相は下院の信任によって権力を得るという仕組みによる。
労働党の規則では、党首は党員や労組、下院議員らの支持を得ている必要がある。それを保証するのが党首選だが、同党は政権を握っている間に、本格的な党首選を実施したことは一度もない。党首選は不確実性や混乱を招きかねない。
スターマー氏は2024年の総選挙を、労働党党首として136ページに及ぶマニフェストを掲げて戦い、勝利して首相に就任した。それに対してバーナム氏は、メイカーフィールドでの補選における1カ月間の選挙戦で、自らの政策案をわずかに示したに過ぎない。
当然ながら、リフォームUKをはじめとする野党などからは、バーナム氏が事実上首相に選出された場合は早期に総選挙を実施するよう求める声が、すでに上がっている。
とはいえ、バーナム氏にそれを強いるものは何もない。法的には、次の総選挙は2029年まで実施する必要はない。












