南米コロンビア大統領選、トランプ氏が支持した右派候補が勝利

Published
この記事は約 6 分で読めます

アイオニー・ウェルズ記者(コロンビア・バランキージャ)

南米コロンビアで21日、大統領選の決選投票が行われ、初期集計によると右派候補のアベラルド・デラエスプリエジャ氏が僅差で勝利した。右派政権の誕生により、国内の武装紛争と暴力への対応に劇的な変化が生じるとみられている。

デラエスプリエジャ氏は、ドナルド・トランプ米大統領が支持を表明していた。違法な武装組織や麻薬取引、犯罪の取り締まりに軍を投入すると、デラエスプリエジャ氏は約束している。

同氏は、現職のグスタボ・ペトロ大統領の側近である左派候補イバン・セペダ氏を破った。

デラエスプリエジャ氏は、「今日、我々の国にとって新たな段階が始まる。偉大で、安全で、繁栄し、機会に満ちたコロンビアを信じることを選んだ何百万もの市民の、自由で民主的な意思によって築かれる段階だ」と述べた。

初期集計では、開票率99%の時点で、デラエスプリエジャ氏の得票率は49.7%と、セペダ氏の48.7%をわずかに上回った。

セペダ氏は敗北を認めず、暫定結果は「公式のものでも、拘束力のあるものでもない」と主張。「正式な開票集計が行われ、その最終結果が示され、検証が完了した時点で、その仕組みから導かれる公式結果を認める」としている。

ロイター通信によると、5月31日の第1回投票では、初期集計に大きな違いはなかった。

カリブ海沿岸地域で育ったデラエスプリエジャ氏は、同地域で顕著な支持を得ていた。

初期の開票結果が伝えられた後、デラエスプリエジャ氏は沿岸都市バランキージャで、祝福に集まった大勢の支持者に向けて演説した。

「今夜はこの国家にとって新しい物語の始まりだ。今夜、新しい時代が始まり、体制の変化が始まる」と、自らを「エル・ティグレ(虎)」と呼んでいるデラエスプリエジャ氏は述べた。

「私はすべてのコロンビア国民のために統治する。私に投票した人々のためにも、もう一人の候補を選んだ人々のためにも」

同氏はまた、同国の1991年憲法への忠誠を誓い、それを守ると述べた。

デラエスプリエジャ氏の支持者らは、コロンビアのサッカー代表チームの黄色いユニフォームを身に着け、国旗を振った。

「コロンビアを再び偉大に!」と文字が書かれた帽子をかぶっている支持者もいた。これは、トランプ氏のスローガン「アメリカを再び偉大に」を書いた帽子をまねたもの。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「彼は勝った、大勝だ!」と書いた。

一方で、セペダ氏の支持者らもバランキージャの通りに出て、接戦での勝利に対する懸念を表明した。

「明らかに不安な雰囲気がある」と、セペダ氏を支持する学生で活動家のカタリナ・ラ・グランデ氏はBBCに語った。

「票差がこれほど小さいことも不安だ。この国がどれほど分断されているか、そして民主主義、平和、人々の権利を守るうえで私たちが直面している課題がいかに大きいかを示している」

両候補の極端な相違は、選挙後にコロンビアが不安定な状況に陥ることへの懸念を強めている。特に、一部の批判勢力が結果を認めない場合、その懸念はさらに大きくなる。

21日の遅い時間には、同国第3の都市カリで、抗議者と警察の衝突があったと報じられた。デモ参加者らはアメリカの国旗を燃やした一方、警察はデラエスプリエジャ氏の勝利に怒る大規模な群衆を解散させるために催涙ガスを使用した。

また、現職のペトロ大統領が選挙結果に異議を唱える可能性もある。ペトロ氏はXに、「初期集計の結果だけでは、いずれの候補も大統領と宣言することはできない」と投稿した。また、一部の投票所が「侵害された」と、証拠を示さずに主張し、投票ソフトウエアの監査を要求した。

弁護士であり実業家でもあるデラエスプリエジャ氏には、これまで政治経験がない。

弁護士として同氏が依頼を受けた人には、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ元大統領の側近だったアレックス・サーブ氏や、コロンビア最大級の詐欺師の一人であるダビド・ムルシア・グスマン氏などがいる。デラエスプリエジャ氏はこれについて、弁護士としての職務の一部だったと述べている。

デラエスプリエジャ氏と支持者らは、集会やソーシャルメディアで頻繁に、サッカーのコロンピア代表ユニフォームを着用しており、これを政治利用だと非難する声もある。また軍隊式の敬礼も行っている。同氏はしばしば、防弾ガラスのスクリーンを立てて演説している。

また、治安政策やひげのスタイルに至るまで、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領と比較されてきた。

デラエスプリエジャ氏の掲げる公約で注目されているのは、違法武装勢力による紛争の取り締まりだ。コロンビアでは、利益の大きいコカイン密輸ルートや違法採掘地をめぐる紛争が十数年にわたって続いているが、ここ数年で暴力が激化。武装ゲリラ組織やカルテルの構成員は、この5年で2倍になっている。

現職のペトロ大統領は、武装勢力との交渉を優先する「全面的平和」戦略をとってきた。しかし、武装勢力が停戦を利用して影響力や支配地域を拡大したことなどから、この戦略は失敗だったと批判する声もある。

デラエスプリエジャ氏は、武装組織とのあらゆる交渉を打ち切り、秩序回復のためにより強硬な軍事的取り締まりを導入すると約束している。これにはアメリカとの連携強化も含まれる。

このほか、ジャングルでの巨大刑務所建設や、「小さな政府」への転換、医療制度改革などを公約に掲げている。

コロンビアは歴史的に、中南米地域におけるアメリカの最も緊密な同盟国の一つ。しかしペトロ氏は、アメリカの移民政策や関税中南米への軍事介入をめぐってトランプ氏と対立しており、近年は緊張した関係になっていた。

中南米では最近、治安への懸念から、いくつかの選挙で右派が勝利しており、今回のデラエスプリエジャ氏の勝利も、そうした広範な変化の一部だ。

トランプ氏はデラエスプリエジャ氏を支持するにあたり、「不法移民を阻止し、犯罪や麻薬を取り締まり、法と秩序を回復する」と述べた。選挙直前には、デラエスプリエジャ氏の背後には「アメリカの全面的な支持と力がある」とも話していた。

同氏は長年、米フロリダ州マイアミで生活し、2023年にアメリカの市民権を得ている。

デラエスプリエジャ氏は、近隣諸国の右派指導者からも称賛されている。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、コロンビア国民が「経済的自由、繁栄、揺るぎない安全、そして組織化された越境犯罪と麻薬取引に『もう十分だ』と告げる道」を選んだと述べた。

チリのホセ・アントニオ・カスト大統領は、「コロンビアにとって自由の新たな段階が始まり、それにより安全と繁栄を取り戻すことが可能になる」と述べた。