石油大手シェル、石油・ガスの減産は「危険で無責任」 BBCインタビュー

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サイモン・ジャック、ビジネス編集長

Wael Sawan
画像説明, 石油大手シェルのワエル・サワンCEO

英石油大手シェルのワエル・サワン最高経営責任者(CEO)は、石油とガスの減産は「危険で無責任」だと、BBCの単独インタビューで語った。

サワンCEOは、再生可能エネルギーへの移行について、石油・ガスに取って代わるほどの早いスピードでは進んではいないとし、世界は依然として「石油とガスを切実に必要としている」と主張した。

また、中国からの需要が増え、欧州に厳しい冬が到来することで、エネルギー価格と光熱費が再び押し上げられる可能性があると警告した。

2030年まで現在の石油生産体制を継続するというシェルの計画に、気象の専門家の多くは強く反発し、同社とサワン氏は間違っていると批判している。

英ケンブリッジ大学の気候科学者エミリー・シャックバーグ教授は、シェルのような企業は「石油やガスの利用を長引かせる方が、社会的弱者が何らかの恩恵を受けられるので、その方がいいのだと言うのではなく」、環境にやさしいグリーンな社会への移行加速に注力すべきだと話した。

これについてサワン氏はBBCに対し、「失礼ながら同意しかねる」と述べ、こう続けた。「石油とガスの生産を削減することで、昨年直面したような生活費の高騰を再び起こすことこそ、危険で無責任だ」。

世界各国のリーダーは、今世紀中に気温上昇を工業化以前から平均摂氏1.5度以下に抑えると約束。化石燃料の使用をやめ、より環境に優しい燃料への切り替えを急いでいる。

欧州委員会は昨年、グリーンエネルギーへの移行を加速させ、ロシアの石油・ガスへの依存を解消する計画を発表した。

多くの国では、より持続可能なエネルギーに移行するためのインフラがまだ整っていない。

サワン氏によると、昨年の国際的なガス入札合戦で、パキスタンやバングラデシュのような貧困国には液化天然ガス(LNG)を輸入する余裕がなく、こうした燃料は北欧にまわされたという。

「これらの国々からLNGが奪われ、子どもたちはろうそくを灯して働いたり、勉強しなくてはならなかった」

「(持続可能エネルギーへの)移行が必要なら、それは世界の一部だけに通用するものではなく、公正な移行でなくてはならない」

英政府と議会に諮問する気候変動委員会は、家庭用ガス器具が呼吸器疾患や心血管疾患と関連があることを確認している。

世界的な科学・政策研究機関「クライメート・アナリティクス」の気候政策共同責任者、クレア・ファイソン氏は、「化石燃料に依存するか、ろうそくの明かりで働くかのどちらかを選択するという考えは、現実を著しくゆがめるものだ。再生化のエネルギーの方が環境に優しく、安価で、公衆衛生にとってもより良いことは分かっているのだから」とBBCに語った。

イギリス政府は、国際的な気候変動資金に116億ポンド(約2兆1260億円)を投じると約束している。しかし、BBCが確認した英政府の内部メモには、新型コロナウイルスのパンデミックの時のような経済的ショックによって、通常より高く設定した目標が巨大な挑戦へと変わった」と書かれていた。

国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、「各国政府が気候危機について真剣に考えているなら、石油やガス、石炭への新規投資は今後あり得ない」と述べた。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、石油・ガス生産への新たな投資は「経済的・道徳的な狂気」だと述べた。

「安定性の欠如」

長い歴史を持つシェルは、イギリスに本社を置いている。しかしサワン氏は、エネルギー政策と税制に関する明確さと安定性が欠如しているため、イギリスをより友好的な国々と比べたときに、あまり魅力的な投資先でなくなる危険があると述べた。イギリスは石油・ガス価格が持続的に基準値を下回らない間は、イギリス由来の利益に対する課税を2028年まで40~70%に引き上げる措置を取っている。ただ、ほとんどのエネルギー専門家は、価格が基準値を下回ることはないと考えている。

イギリスは現在、国内で使用する石油とガスの半分以上を輸入に頼っている。北海でのエネルギー開発に再投資しない限り、輸入の割合は増えると予想されている。シェルは最近、英領北海シェットランド諸島沖にある未開発のカンボ油田の権益を売却することを決めた。

「結局のところ、政府は(エネルギーの)輸入と国内生産をめぐる自分たちの見解について判断を下す必要がある」と、サワン氏は述べた。

「投資への明確な支援がある他国と比較すると、こうした長期投資に必要な安定性が存在しないということに疑問が生じる」

「切望するエネルギー」

サワン氏はまた、最近行われた投資家会議で、ニューヨーク証券取引所が同社を温かく歓迎したことをしきりに強調した。この投資家会議では、コスト削減と利益の最大化という計画が示された。

「あの場での歓迎ぶりは模範的なものだった。ニューヨーク証券取引所の旗の隣でシェルの旗がはためいていた」

アメリカは石油・ガス会社に対してより協力的だという印象を、現地関係者から強く感じたという。

「私たちが切実に必要としているエネルギーを供給する会社を、評価し続けると言っていた。エネルギー不足の問題を抱えるレバノン出身の私としては、心に響くものがあった」

アメリカへの将来的な移転は

サワン氏は、アメリカへの本社移転と株式上場の可能性を排除しなかった。米石油会社は自社株の価格を高く設定している。エクソンモービルの場合、利益1ドルあたりの価値はシェルよりも40%高い。

「アメリカに移転しなければ、その評価のギャップを埋めることができないのだろうかという疑問を持つ人は多い。今後3年間は、本社移転は優先事項ではない」

しかしその後はどうなるのか。「会社と株主にとって適切な状況を作り出す可能性のあるものを排除するつもりはない。結局のところ、私は株主価値のために働いているので」と、サワン氏は答えた。

今後3年間はアメリカへの本社移転と株式上場の計画はないと、シェル側は説明している。しかし、サワン氏の今回の発言は、多国籍企業の資金調達の場としてのロンドン株式市場の輝きが失われつつあるという懸念に拍車をかけるだろう。最近では、テクノロジー企業「ARMホールディングス」がアメリカでの上場計画を発表している。

イギリスで最も価値のある企業がアメリカに移転すれば、イギリスの金融面での威信を著しく失墜させ、金融サービス部門の雇用喪失につながるだろう。