ロシアの軍艦、イギリス人夫婦の乗ったヨットに警告射撃 英仏海峡で

画像提供, Ministry of Defence
レイチェル・フリン記者、ポール・アダムス外交担当編集委員、ヴィクトリア・ダービシャー司会者(ニューズナイト)
英仏海峡で16日、イギリス人夫婦の乗ったヨットに対し、ロシアの軍艦が警告射撃を行った。
英国防省などによると、ジェーン・ケルヴィー氏とアラン・ケルヴィー氏の乗ったイギリス登録のヨットは16日午前、ワイト島沖約37キロの海域を航行していた際、ロシアのフリゲート艦「アドミラル・グリゴロヴィッチ」と接近した。この時、同艦がヨットの進路に向けて発砲した。
同省はこれを「単発的な事案」と説明した。一方ロシア国防省は、ヨットが軍艦に対して「危険な接近」を行ったと述べた。
ケルヴィー夫妻は「衝突コースには絶対にいなかった」とBBCに語った。

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BBCの「ニューズナイト」に出演したジェーン氏は、「(軍艦は)汽笛を5回鳴らした。これは『こちらが見えているか』という意味だ」と述べた。
「私たちはすぐに左舷へ2度かじを切って、意図的に進路を変えたこと、つまり、あちらを認識していると分かるようにした」
「それから1分ほどして、彼らは再び汽笛を5回鳴らし、その直後に小火器で4~5発、発砲した」
「私たちを狙ったものではなかった。上空に向けた警告射撃だったと私たちは考えている」と、ジェーン氏は語った。
ロシア国防省は16日の早い段階での声明で、このヨットが軍艦に対して「危険な接近」をしていたと述べていた。
同省によると、アドミラル・グリゴロヴィチの乗組員は無線での連絡を数回試み、警告用フレアを発射した後に、小銃でヨットの進路に向けて発砲した。
また、自国の乗組員らは「国際的な海上航行規則を厳格に順守して」行動したと説明した。
一方、英国防省の報道官はBBCに対し、「グリゴロヴィチは英仏海峡でイギリス船舶への連絡を試みた後、警告射撃を行った。これは当該船舶を狙ったものではなく、衝突の可能性を防ぐための試みだった」と述べた。
ジェーン・ケルヴィー氏は、自分たちのヨット「ブライト・フューチャー」は「衝突コースには絶対にいなかった」と述べた。
「私たちにとっては、発砲が始まるまでは事件ですらなかった」
同氏は、発砲は「全く不必要だった」と述べ、この出来事を航行上の危険として通報したのは「そうするべきだったからだ」と述べた。
この出来事は、イギリスの領海外に当たる、ワイト島の南およそ20カイリの地点で発生した。
英当局は、16日午前にヨットの乗員から、ロシアの船舶が約460メートルの距離から警告射撃を行ったとの報告を受けたと述べた。この距離は、海上航行の基準では比較的近距離に当たる。

BBCの取材では、この小型のセーリングヨットは、イギリスから出航した後、霧の状況下で軍艦の方へと漂っていたことが分かっている。
英当局は、アドミラル・グリゴロヴィッチが、このヨットがエンジンによる推進で進んでおらず、操縦性が低い状態にあると示そうとしていたとみている。軍艦の乗員が、このヨットについて衝突の恐れが高いと判断した可能性がある。
通報の後、英海軍の哨戒艦「タイン」からボートが派遣され、ヨットで詳細な情報を収集し、乗員の安全を確認した。
「ニューズナイト」のヴィクトリア・ダービシャー司会者が、発砲音を聞いた後に恐怖を感じたかと尋ねたところ、ケルヴィー夫妻は落ち着いた様子で、怖くはなかったと答えた。
ジェーン氏は笑いながら、「自分を守るために」身をかがめてキャンバス製のフードを頭にかぶっただけで、その間も夫は船を操縦していたと、冗談めかして語った。
ダービシャー司会者はこのインタビュー後、ヨットが「危険な衝突コース」にあったとするロシア国防省の声明について、夫妻は当惑しつつもややいら立っている様子だったと語った。

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ロシアの軍艦は英仏海峡の国際水域を定期的に通過しており、通常は、イギリス海軍の艦艇がこれを監視している。
アドミラル・グリゴロヴィッチは、フランスのブレスト沖で発見されて以降、数日にわたり、英海軍のリヴァー型哨戒艦「マージー」が追尾していた。英海軍はこれを、「通常の作戦」と説明した。
北大西洋条約機構(NATO)の関係者は先に、BBCヴェリファイ(検証チーム)に対し、アドミラル・グリゴロヴィッチは英仏海峡で「影の艦隊」を護衛する任務についていると語った。ロシアは自国の石油輸出に対する制裁を回避するため、「影の艦隊」を運用している。
アドミラル・グリゴロヴィッチはこの海域で一定期間活動しており、工作艦から繰り返し補給を受けていたとみられている。
BBCヴェリファイが精査した人工衛星画像からは、工作艦「PM-82」がここ数カ月、英仏海峡と北海の間で活動していた様子が確認できる。
NATOは、PM-82が食料や水、その他の補給物資をアドミラル・グリゴロヴィッチに供給したことで、同艦が長期間にわたり海上にとどまり、英仏海峡を通過するロシアの船団を先導できていたとみている。
4月には、英海軍が監視するなか、アドミラル・グリゴロヴィッチが「影の艦隊」の船舶6隻を、この海路で護衛したと報じられた。
英海軍は以前、アドミラル・グリゴロヴィッチが大西洋、地中海、バルト海を往来するロシア船籍の船を護衛しており、その中には「潜水艦1隻と、約6隻の商船および支援船」が含まれていたと述べていた。
イギリスとロシアの緊張高まるなか
イギリス海兵隊のコマンドー部隊は14日、英仏海峡でロシアの「影の艦隊」に属する石油タンカーを拿捕(だほ)した。イギリス軍がこうした作戦を行うのは初めてだった。
英当局は、ヨットの事案とこの作戦には関連がないとみているという。
元英海軍少将のジェイムズ・パーキン氏は、武力の行使は最終手段であり、自衛のためにのみ用いられるものだと述べた。
同氏はBBCニュースに対し、「今回のことが判断ミスだったとしても驚かない。イギリス海域に非常に近い場所で発生した、イギリスのヨットに向けて発砲しようとした意図的行為だったのではなくて」と述べた。
一方でパーキン氏は、英海兵隊による石油タンカーの拿捕は、ロシアにとって「大きな屈辱」だと指摘。「英仏海峡にいるロシア海軍の船は、まさにこうした事態を防ぐためにいるのだから」と述べた。
イギリスとロシアの緊張が高まるなか、イギリスでは先週、防衛投資計画(DIP)をめぐる政府内での対立から閣僚2人が辞任。ジョン・ヒーリー前国防相とアル・カーンズ前軍務担当閣外相は16日、下院での辞任演説で、ロシアが一層攻撃的な行動に出ていると警告した。
こうした状況下で、ヨットをめぐる比較的小規模な出来事も大きく受け止められている。
追加取材:マット・マーフィー記者、タビー・ウィルソン記者(BBCヴェリファイ)








