アゼルバイジャン、「対テロ作戦」開始24時間で「主権回復」宣言 アルメニアとの係争地めぐり

画像提供, Russian Defence Ministry
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は20日、隣国アルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフでの軍事行動開始から24時間で、同地における主権を回復したと宣言した。同国はアルメニア人の分離主義者が降伏するまで作戦はやめないとしていた。
アゼルバイジャンとアルメニア系勢力の双方はこの日、ロシアの平和維持軍の仲介で、現地時間20日午後1時(日本時間同午後6時)から敵対行為を完全に停止することで合意したと発表した。アゼルバイジャン軍はこれに先立ち、アルメニア系勢力から90以上の陣地を獲得したとしていた。
アゼルバイジャンと、現地で平和維持軍を展開するロシアがまとめた停戦協定の条件には、ナゴルノ・カラバフの地元勢力が武装解除と体制の完全な解体を約束することが含まれている。
アルメニア政府は、ナゴルノ・カラバフにおける軍事的プレゼンスを否定しているが、停戦の条件にはアルメニア軍の同地域からの撤退も盛り込まれた。
ナゴルノ・カラバフのアルメニア系勢力が降伏に同意した数時間後、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は自軍の英雄的行為を称賛した。
アゼルバイジャンの大統領府は、ナゴルノ・カラバフの中心都市ハンケンディ(アルメニアではステパナケルトと呼ばれる)の北約100キロにあるエヴラフ町で、当局者が21日にアルメニア側の代表者と「再統合の問題」について協議すると発表した。アリエフ大統領はアゼルバイジャン人はナゴルノ・カラバフの住民ではなく「犯罪者の軍事政権」だけを恨んでいると述べた。
<関連記事>
南コーカサスのナゴルノ・カラバフには約12万人のアルメニア系住民がいる。同地域は、国際的にはアゼルバイジャンの一部と承認されているが、アルメニア系の住民が実効支配してきた。
アゼルバイジャンは現在、ナゴルノ・カラバフを完全な支配下に置こうとしている。
同国は19日、ナゴルノ・カラバフで「対テロ」作戦を開始。「違法なアルメニア軍事組織」に対し、武器の引き渡しと「違法な体制」の解体を要求した。
この9カ月間、アゼルバイジャンはアルメニアとナゴルノ・カラバフを結ぶ唯一のルートであるラチン回廊を、効果的に封鎖してきた。
アルメニア系勢力はアルメニアからの支援を得られず、アゼルバイジャンが作戦を開始すると、すぐに同国側の要求に応じることとなった。
ナゴルノ・カラバフの当局は、民間人7人を含む少なくとも32人が死亡し、200人が負傷したと報告している。しかし、アルメニア系分離主義勢力の人権当局によると、少なくとも200人が死亡し、400人以上が負傷したという。BBCはいずれの人数も検証できていない。

画像提供, Artsakh Public TV
こうした中、アルメニアの首都エレヴァンでは20日、数千人の抗議者が街頭に繰り出し、ニコル・パシニャン首相は危機対応を誤ったとして辞任するよう求めた。
進行中の危機
旧ソ連構成国のアルメニアとアゼルバイジャンは、ソ連崩壊後以降、アゼルバイジャンの南西部に位置する山岳地帯ナゴルノ・カラバフをめぐり、2度の戦闘を繰り広げてきた。
2020年の、6週間にわたる戦争では数千人の死者が出た。トルコの支援を受けたアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフとその周辺の複数地域を奪還し、アルメニア系勢力を孤立させた。この時は、ロシア政府の仲介で停戦に合意した。
この9カ月間、アゼルバイジャンはラチン回廊を封鎖。ナゴルノ・カラバフのアルメニア人は食料や医薬品、衛生用品が不足していると訴えたが、アルメニアは支援できずにいた。
ここ数日は、アゼルバイジャンが若干の援助の提供を許可したものの、アルメニア系住民はすでに物資不足によって深刻に弱体化していた。外部からの支援もほとんど期待できる状況ではなかった。
ロシアの平和維持軍は2000人体制で、2020年に合意した停戦状況を監視してきた。アルメニアはロシアが主導する旧ソ連諸国の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の一員だが、現在のロシア政府の関心はウクライナへの全面侵攻に移っている。
ロシアとアルメニア
アルメニアのパシニャン首相は昨年5月、アルメニア系住民の安全保障と引き換えに、ナゴルノ・カラバフをアゼルバイジャンの一部と認める用意があると述べたとされる。
「アゼルバイジャンの8万6600平方キロメートルの領土にはナゴルノ・カラバフが含まれている」と、同首相は述べたという。
ロシアは、西側諸国に傾倒しているように見えるパシニャン氏にいら立っている。
パシニャン氏の妻アンナ・ハコビャン氏は今月初め、ウクライナ・キーウで開かれた会議でウォロディミル・ゼレンスキー大統領と握手を交わした。今週には、数十人のアルメニア兵とアメリカ兵が合同軍事演習を行った。
アルメニアは、ロシアが同盟国を助けるために十分な対応を取らなかったと主張している。クレムリン(ロシア大統領府)はこれを否定している。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先週、パシニャン氏とは何の問題も抱えていないとしつつ、「もしアルメニア側がナゴルノ・カラバフをアゼルバイジャンの一部だと認めたら、我々はどうすればいいのか」と付け加えた。

画像提供, Reuters
アルメニアの首都エレヴァンでは19日、パシニャン首相の危機対応を批判し、辞任を求める抗議デモがあった。首相はクーデターを呼びかける正体不明の勢力について警告した。
抗議者たちは、首相はナゴルノ・カラバフをめぐる争いで譲歩し過ぎており、同地域のアルメニア系住民をほとんど助けようとしなかったと主張している。
エレヴァンの様子をとらえた画像では、暴動鎮圧用の装備を身につけた警官が政府庁舎付近で警備にあたったり、一部の抗議者が石を投げているのが確認できる。
旗やポスターを掲げて平和的に抗議する人がいる一方、負傷し血まみれになっている人もいた。









