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「残酷」……新生児7人殺害の罪で有罪の元看護師、複数の終身刑に 英裁判所
ジュディス・モリッツ、ダニエル・オドノヒュー、ローレン・ハースト、モニカ・リマー BBCニュース
イギリス中部チェスターの病院で新生児7人を殺害し、別の新生児6人を殺害しようとしたとして有罪の評決を受けた元看護師ルーシー・レトビー被告(33)に対し、イングランド北部マンチェスターの王立裁判所(ジェイムス・ゴス裁判長)は21日、仮釈放の可能性がない終身刑を言い渡した。
評決によると、レトビー被告は2015年6月から2016年6月にかけてカウンテス・オブ・チェスター病院で、新生児の家族や他の看護師のすきをついて、新生児7人を殺害したとされる。さらに、ほかに6人を殺害しようとしたという。
評決によると、被告は看護師という立場を悪用し、赤ちゃんに空気を注射したり、大量のミルクを無理やり飲ませたり、インスリンを注射したりしたという。
警察は2017年4月、病院からの通報を受けて捜査に着手。被告は、2018年7月に殺人容疑などで逮捕された。
レトビー被告は無罪を主張している。
最も厳しい刑事罰
マンチェスター王立裁判所での刑事裁判は2022年10月に始まり、殺人7件と殺人未遂15件の起訴内容について、被告は無罪を主張した。今月8日から18日にかけて評決が発表され、陪審員は新生児7人の殺人と、6人に対する7件の殺人未遂について有罪の評決に達したことを明らかにした。殺人未遂2件については無罪となったが、残る6件について陪審は一致に至らなかった。
有罪の評決を受けて法廷で泣き出した被告は、この日の量刑言い渡しには出廷を拒否した。
ゴス判事は、被告人席にレトビー被告がいるものとして、量刑を読み上げた。
レトビー被告は罪状1件につき、終身服役命令を言い渡された。これは、特異なほどの情状酌量の事由がない限り、仮釈放検討の可能性が含まれない、イギリスで最も厳しい刑事罰。イギリスで女性がこの厳罰に処せられるのは史上4人目。現在、イギリスで70人が終身服役命令に服している。
「サディズムに近い悪意」と裁判長
ゴス判事は、被告が「残酷に計算をしながら」犯行を重ねたことは「本当に恐ろしい」と述べた。
「赤ちゃんを大切にして世話をするという、通常の人間の本能とは全く異なる形であなたは行動した。さらに、医療・介護の職に就く人たちに市民全員が託す信頼を、あなたはひどく損ねた」と、ゴス裁判長はそこにいない被告に向けて語りかけた。
警察が被告宅を家宅捜索した際、殺害された赤ちゃんのうち5人目以降に関する業務引き継ぎ用紙を発見したことにも裁判長は触れ、「おぞましい記録」として被告が保管していたものと認識していると述べた。
そのうえで裁判長は、「あなたの行動には、サディズムに近い悪意があった」と述べ、「この裁判の間、あなたは自分の誤った行動について一切、冷酷なまでに、責任を認めてこなかった」、「あなたは何も後悔していない。情状酌量の余地はない」と告げた。
裁判長は、この日の量刑言い渡しを欠席したレトビー被告には、自分のこうした意見とともに、被害者の赤ちゃんたちの両親たちによる「被害者影響報告書」を、被告に渡す予定だと説明した。
国選弁護人のベン・マイヤーズ氏は、レトビー被告が「審理の間、一貫して無罪を主張していた」ため、「減刑につながる情状酌量の材料を、これ以上提示することはできない」と述べた。
マンチェスター王立裁判所の第7法廷でこの日の量刑言い渡しが始まる前、法廷は重い空気に包まれていた。
10カ月間の裁判に参加した陪審員のうち8人が、傍聴席にいた。遺族たちが、自分たちへの打撃のほどを、空の被告人席に向かって語る様子に、家族だけでなく陪審員も涙を流していた。
レトビー被告の両親は審理の間、公判をずっと傍聴していたものの、この日は不在だった。
遺族たちは
息子を失った母親は、「これほど凶悪な人が存在することが恐ろしい」と述べた。
裁判で「赤ちゃんC」と呼ばれた男の子の母親は、息子が亡くなる晩、自分たちの近くに殺人犯がいて様子を見ていたのだと思うと、「まるでホラー小説のようだ」と話した。
「赤ちゃんD」の母親は、レトビー被告が「信頼される看護師としての立場を悪用し、まるで自分にその権利があるかのように凶悪に」行動したと批判した。
「赤ちゃんE」と「赤ちゃんF」の母親は、この日の量刑言い渡しに欠席した被告を「卑怯者」と非難。「優しい看護師のふりをした悪に出会ってしまい、私たちの世界は粉々になった」と述べた。
「私たちは毎回毎回、法廷に来たのに、彼女はもうたくさんだと勝手に決めて牢(ろう)から出てこない。卑怯者による最後の凶悪な行動だ」
被害に遭った赤ちゃんのうち最も早産で生まれ、535グラムしか体重がなかった「赤ちゃんG」は、今では常時ケアを必要としている。両親は法廷で、「神様がうちの子を助けてくれた」のに、「そのあと悪魔が、あの子を見つけてしまった」のだと話した。
レトビー被告が2016年6月に殺害しようとしたと評決が認めた「赤ちゃんN」の両親は、今では7歳になった息子の寝室に、「なんとしても息子を守りたいので」今でも防犯カメラを設置しているのだと話した。
レトビー被告がこの日の量刑言い渡しに欠席したことを受け、最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、「被害者の家族はあまりにひどい目に遭った」だけに、素早い制度改正を政府に求めた。
政府のアレックス・チョーク司法相はソーシャルメディアで、レトビー被告は「人殺しというだけでなく、卑怯者だ。被害者遺族に対面せず、遺族への影響報告や世間による非難を聞こうともしない。最後にもう一度、遺族と社会を侮辱したわけだ」と書き、「被告人は必ず量刑言い渡しに出廷しなくてはならないと、そうなるように法改正を目指す」と述べた。
病院の対応は
レトビー被告が病院で連続殺人を犯したとされる状況について、政府は第三者委員会による独立調査を命じている。ただし、委員会は関係者に証言を強制する権限はないため、どこまで事実関係の解明につながるかが懸念されている。
新生児病棟の主任上級専門医、スティーヴン・ブリアリー医師は、2015年10月の時点からレトビー被告の行動に疑いを抱いていた。病院側に懸念を伝えたものの、病院の経営幹部が何も対応しなかったため、被告はその後も5人の赤ちゃんを襲い、2人を殺害するに至ったのだと、その対応を非難してきた。
ブリアリー医師の懸念に対応しなかった看護部長は、別の地区で看護部長の職についていたが、今回の裁判中に停職処分を受けている。
ブリアリー医師は2016年6月の時点で、レトビー被告の勤務をやめさせるよう病院経営陣に要求したという。
このほかBBCの取材から、レトビー被告について警告する医師たちに謝罪文を被告に提出するよう、病院の経営トップが命令していたことが判明している。
事件発覚後に病院の経営幹部となった人はBBCに対して、赤ちゃんたちの相次ぐ死亡が国民健康サービス(NHS)に適切に報告されなかったことから、この病院で新生児の死亡率が高くなっていることにNHSが気づかなかったのだと話した。
18日の有罪評決を受けて、検察側の医療専門家デウィ・エヴァンズ医師は、現場の医師たちからの警告に何も対応しなかった病院の経営幹部は、警察の捜査対象になるべきだと述べた。
病院の元最高責任者、トニー・チェンバース氏はこれまでに、事件について「本当に申し訳ない」として、レトビー被告後の裁判後の調査に「全面的に協力する」と発言している。
「最高責任者として私は、新生児病棟の安全と、患者やスタッフの健康を何より重視していた」、「私に寄せられる情報とガイダンスに対応しながら、私はオープンに、かつ多くを受け入れて包括的に行動していた」と、チェンバース氏は述べている。