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「ネヴァーマインド」の赤ちゃん、性的搾取でニルヴァーナを提訴
マーク・サヴェッジ、BBC音楽記者
米ロックバンド「ニルヴァーナ」のアルバム「ネヴァーマインド」のカバーに赤ちゃんの頃の写真を使用された男性が24日、性的搾取被害に遭ったとして、ニルヴァーナを提訴した。
このアルバムのカバー写真には、当時生後4カ月だったスペンサー・エルデンさん(30)が、プールの中で釣り針に付けられた1ドル札を捕まえようとする様子が使われている。写真では、赤ちゃんの性器も写っている。
エルデンさんは、両親はこの写真の使用許諾を与えていなかったと主張。また、裸の写真が児童ポルノに当たると主張した。
米カリフォルニア州の連邦裁判所に提出された訴状には「この画像は乳児の頃から現在に至るまで、スペンサー氏の身体のプライベートな部分をさらし、性器をわいせつなものとして表示している」と書かれている。
アメリカの法律では、性的ではない乳児の写真は通常、児童ポルノとは見なされていない。
しかし、エルデンさんの弁護人を務めるロバート・Y・ルイス氏は、画像に1ドル札があることで、乳児が「性労働者のように」見えると主張した。この1ドル札は、アルバムカバー用に写真に後から付け加えられたもの。
エルデンさんはさらに、ニルヴァーナはエルデンさんの性器部分をシールで隠すと約束したにもかかわらず、そうしなかったと訴えている。
エルデンさんは「自分の本当のアイデンティティーや法律上の名前は、未成年の頃に経験したこの商業的な性的搾取と永遠に結びつけられてしまっている。この商品は、自分が赤ちゃんの頃から今に至るまで世界中に流通し、販売されている」と訴えた。
また、この作品によって「傷つけられ、これから一生、傷つき続ける」と説明。「極端かつ永続的な感情的苦痛」を感じた、「通常の生育や教育上の進展を阻害」され、「医学的・心理的治療」を必要としたと述べた。
エルデンさんは今回、ニルヴァーナのデイヴ・グロール氏とクリスト・ノヴォセリック氏、故カート・コベイン氏の財産管理人、コベイン氏の元妻コートニー・ラヴ氏、そしてこの写真を撮影したカーク・ウェドル氏など合わせて15人を提訴。それぞれに15万ドル(約1650万円)の損害賠償を求めている。
(編注:ニルヴァーナのKurt Cobain氏の姓は日本では「コバーン」表記が一般的ですが、BBC日本語版では、元の発音に近く「コベイン」と表記します)
ニルヴァーナのやレコード会社の代理人は、これについてコメントしていない。
エルデンさんは同アルバムの10周年、20周年、そして25周年に合わせ、水着を着た状態でオマージュ写真を撮影している。
一方で、この写真撮影については複雑な気持ちだとも述べていた。
2016年にはタイム誌に対し、成長するにつれて自分の「名声」に「動揺するようになった」と語っていた。
「目が覚めたらこの大きなプロジェクトの一部になっていた。きつい。自分は何もしていないのに有名になった気分で」
「どれくらいの金額が動いていたのかを知って、動揺しないわけがない」
「野球の試合を観に行けば、『ここにいる全員がたぶん、自分の子供の頃の性器を見てるんだな』と思ってしまうし、自分の人権の一部がはぎ取られたように感じる」
他のインタビューでは、明るい雰囲気で語っている。
6年前の英紙ガーディアンの取材では、「自分にとってはいつも前向きな、扉を開けてくれるものだ」と話した。
「23歳のアーティストとして、この体験を通じてシェパード・フェアリーと5年も仕事をする機会をもらったし、素晴らしい経験だった。彼は素晴らしい音楽通だ。私がニルヴァーナの赤ちゃんだと知って、とてもクールだと思ったそうだ」
2008年には、父親のリックさんが米ラジオNPRに出演し、家族の友人だった写真家のウェドル氏に、200ドルで撮影のオファーをもらったと語った。
「プールで大きなパーティーを開いていただけで、何がどうなっているのか誰も知らなかった!」とリックさんは話した。
数カ月後にロサンゼルスのタワーレコードの壁にネヴァーマインドのカバーが載るまで、一家はこの撮影のことはすっかり忘れていたという。
このラジオ番組から2カ月後、NPRは記事の中で、「ジェッフェン・レコーズは1歳になったスペンサー・エルデンに、このアルバムのプラチナ盤とテディベアを送った」と報じた。
「ネヴァーマインド」には「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」や「カム・アズ・ユー・アー」、「リチウム」といった楽曲が収録され、全世界で3000万枚を売り上げた。
ウェドル氏は2019年のガーディアンの取材で、まだエルデンさんと連絡を取っていると話した一方、エルデンさんが「あの写真について葛藤を抱いている」と認めている。
「彼は、みんながあの写真で稼いだのに、自分はそうじゃなかったと感じている。彼にも見返りがあるべきだと思うが、利益を得るのはいつもレコード会社だ」