アフロ髪に適した水泳帽、オリンピックで認めず 国際水泳連盟

Model wearing a Soul Cap

画像提供, Luke Hutson Flynn

画像説明, 国際水泳連盟はソウル・キャップの水泳帽(写真)について、「頭の自然な形」に沿っていないと説明したという
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イギリスの若い黒人の水泳選手たちが、国際水泳連盟(FINA)の判断に「失望し、傷ついた」と嘆いている。自分たちの髪の毛に合うよう作られた水泳帽が、今夏の東京大会を含むオリンピックで使ってはならないとされたためだ。ただその後、この判断をFINAが見直す動きもみられる。

この帽子は英「ソウル・キャップ」が製造した。同社が、競技会での使用認可をFINAに申請したところ、認められなかった。

「頭の自然な形」に沿っていないため不適格だと、FINAは説明したという。

ソウル・キャップは、ドレッドロックス、アフロ、ウィーヴ、ヘア・エクステンション、ブレイズなどの髪型や、毛量が多い髪、巻き毛の髪などにフィットし、髪を保護する水泳帽を作っている。

英バーミンガムの水泳選手ケジャイ・テレロンジさん(17)は、FINAの判断に「傷ついたけど驚いてはいない」と、BBCラジオ1の番組「ニュースビート」で話した。

黒人の水泳選手としてケジャイさんは、様々な壁に直面してきた。髪のケアは、その1つだという。

「他のみんなが使っているような小さい帽子を使うと、頭にはフィットする。でも、私は髪に(保護用の)オイルを塗っているので、泳ぐと帽子が頭からずれて、髪がぬれてしまう」

今回のFINAの判断には、水泳を愛する人たちから激しい批判が起きた。

それを受けてFINAは声明を出し、ソウル・キャップの水泳帽について「状況を再検討している」と表明。「多様な人を受け入れることの重要性」を理解しているとし、ソウル・キャップ側と帽子の使用について話し合うとした。

一方、イングランドの水泳連盟は、同地域内での大会でソウル・キャップの水泳帽が認められることを「保証する」との声明を発表。FINAの拒絶については、「適切な経路」で「懸念」を伝えたとした。

「誤解と無知」

アフロにした髪は、他の髪型より細胞の層が少ないため、もともと乾燥している。水泳プールの次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤の成分)でさらに乾燥し、傷んでしまうこともある。

ケジャイさんの母親のケイシャ・オモジョオ=ハウさんは、ソウル・キャップの帽子について、「私たちの大きな髪を乾いたままにしてくれるところがすごい」と話す。

東京で今夏、イギリスの黒人女性として初めてオリンピックの水泳に出場するアリス・ディアリング選手(24)らが、ケジャイさんのような黒人の子どもたちに希望を与えていると、母ケイシャさんは言う。しかし、FINAがこのままソウル・キャップの水泳帽を認めなければ、ディアリング選手の影響が子どもたちに届かなくなってしまうと、ケイシャさんは心配している。

Keisha Omojowo-Howe and Kejai Terrelonge

画像提供, Keisha Omojowo-Howe

画像説明, ケジャイ・テレロンジさん(右)は子どものころ、一緒に水泳をしていたグループで数少ない黒人だった。ほかの子どもたちとは違う扱いを受けたという

ディアリング選手は、FINAの判断について意見を公表していない。ただ、2019年の「ニュースビート」では、黒人少女が髪を理由に水泳をやめてしまうのは理解できると話していた。

さらに今年2月には、ソウル・キャップの「大使」に任命され、幸運に思っていると表明。同社につて、「世界中の黒人コミュニティー内にある深刻な問題を受け止め」、「水泳用具は多様な人を受け入れるものになりえないという通念を打ち消そうとしている」と述べた。

ソウル・キャップによると、FINAは同社に対し、「(私たちが)知っている限り、国際大会に出場している選手たちはこれまで1度も、そのような大きさと形状の帽子を使ったことも、必要としたこともない」と説明したという。

FINAはそうした発言があったことについて、肯定も否定もしていない。BBCの取材申し込みにも応じていない。

水泳コーチのトニー・クローニンさん(22)は、FINAがソウル・キャップの帽子について、「頭の自然な形」に合っていないと表現したことに「失望した」と話す。

「単なる誤解と無知のあらわれだ」と、彼は「ニュースビート」に述べた。

「小さな水泳キャップだと、それに収まるように髪を編まなくてはならない。その上、髪がぬれないか心配になる。ぬれたら洗って、コンディショナーを使って、くしでとかなくてはならないからだ。ものすごく時間がかかる」

「ソウル・キャップがせっかく実際に私たちの役に立つ帽子を作ったのに、『ああ、それは使わないでくれ』と言われるなんて、あまりにひどい」

Tony Cronin

画像提供, Tony Cronin

画像説明, トニー・クローニンさんは、黒人の水泳コーチが非常に少ないため、自分が「ロールモデル」になっていると話す

彼によると、黒人の水泳コーチはごくわずかだという。そのため、彼は職場のハックニー・アクアティクス・クラブ(ロンドン)で、指導している子どもたちにとっての「模範となる人物(ロールモデル)」になっていると話す。

「黒人の水泳選手にはとても多くの障壁があり、(FINAは)また別の障壁を増やしたようなものだ。私がやっている仕事の意義をそっくり無にしている」

ジャマイカの競泳選手マイケル・ガニングさんもツイッターで、FINAの言葉遣いを批判。「競技のトップが黒人コミュニティーを罰し、さらに差別する」ようなFINAの判断について「まったく衝撃的で、不快きわまりない」ものだと投稿した。

「もう終わりにする」

「スポーツ・イングランド」の昨年1月の報告書によると、イギリスの水泳界では白人の子どもの参加率が人口比より多い。

水泳をしている白人の子どもは29.3%だった一方、アジア系の子どもは21.9%、黒人の子どもは20.1%だった。

ヴァネッサ・デイヴィスさん(23)は、少女時代に週3回、水泳に通っていたが、少数派だった。

「あとで髪を整えるのが大変」で、大嫌いだったと言う。

Vanessa Davis

画像提供, Vanessa Davis

画像説明, ヴァネッサ・デイヴィスさんはFINAの説明について、「水泳に関心のある黒人に配慮はしない」と述べているようだと話した

「キャップはいつも全部、小さすぎて、私の髪を保護してくれなかった」とデイヴィスさんは振り返る。

「私の髪は必ずぬれて、ぐちゃぐちゃになった。塩素を洗い落とすのに、時間がすごくかかった。特に髪を編み込んでいた時は」

「第6学年(16~18歳)になった時、もうたくさんだと思って、やめると決めた。当時、エクステンションのウィーヴを試し始めていて、水泳キャップが役に立たないのにうんざりしていた。それが水泳をやめた主な理由だった」

ソウル・キャップを創業したマイケル・チャップマンさんとトクス・アハメド=サラウディーンさんは、同社の帽子を大会で使用するのを認めないというFINAの判断によって、デイヴィスさんのような人がさらに増えると考えている。

2人は共同声明で、今回のFINAの判断により、水泳選手は「愛するスポーツと自分の髪のどちらかを選ぶ」ことを続けなくてはならないと訴えた。

「若い水泳選手たちにとって、仲間として受け入れられているという感覚や、若いうちにスポーツに親しむことはとても大事だ」

「草の根の小規模メーカーにできることは限られている。(水泳界の)トップの立場の人に、前向きな変化を受け入れてもらう必要がある」