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ロンドンの刑務所から脱走、テロ罪で起訴の元兵士 捜索続く
英ロンドンのワンズワース刑務所で6日、テロ罪で起訴され勾留中だった元英軍兵が脱走し、警察が全国的な捜索を始めた。
ダニエル・アベド・カリフ被告(21)は、軍基地に偽の爆弾を置きざりにしたとして起訴され、勾留されていた。刑務所の調理室から、配達車の下に体をくくり付けて逃亡したとみられている。
この影響で、各地の空港や港ではセキュリティーチェックが強化され、運航に大幅な遅れが出た。
刑務所当局はロンドン警視庁と協力し、カリフ被告の脱走方法などについて「迅速な捜査」を進めている。
カリフ被告は6日午前7時50分ごろ、ロンドン南西部にあるワンズワース刑務所の調理室から逃走を開始したとみられている。
被告の身長は約187センチ。最後に目撃された時には、刑務所で支給される調理係の制服である白いTシャツと赤と白のチェック柄のズボン、茶色のブーツを身につけていたと、警察は説明した。
警察はまた、公衆に対する被告の危険度は「低い」としている。だが、発見しても近寄らず、緊急サービス999番に通報するよう呼びかけている。
カリフ被告は2019年に入隊。ロンドンのキングストン地域やイングランドのノースウエスト(北西部)に地縁があるが、捜索活動は全国におよんでいる。
警察は6日夜の時点でも手掛かりをつかめていない。ロンドン警視庁が市民に情報提供を呼びかけたことからは、最初の手がかりが行き詰まったことがうかがえる。
ロンドン警視庁の対テロ部門を率いるドミニク・マーフィー警視長は、全ての警察組織とイギリスの国境検問所に通達を出したと述べた。
空港や海港ではセキュリティー対策が強化され、ヒースロー空港やマンチェスター空港、ドーヴァー港などで運航に遅れが出た。こうした遅れは7日午後には解消するとみられている。
マーフィー警視長は、捜索が集中しているロンドン一帯に対テロ部門の警官を派遣していると述べた。
その上で、カリフ被告は「現在、国内のどこにいてもおかしくないし、出国する可能性があることも警察は念頭に置いている」とした。
偽の爆弾や個人情報の収集
カリフ被告は、テロ行為を準備し、敵に役立つ情報を収集するなどしたとして、テロと国家機密法違反の罪に問われている。また、敵対国のために働いていたとされる。
同被告はこれらの行為があったとされる後の今年1月2日、基地から姿を消したが、同月26日に逮捕された。
今年2月にウェストミンスターの治安判事裁判所で開かれた裁判資料によると、同被告は、国防省のスタッフォードの拠点に「爆発または発火する可能性があると他人に信じ込ませる目的で」、偽の装置を置きざりにしたとされる。
また、2021年には「テロ行為を実行または準備する人物に役立つ可能性が高い」とされる兵士らの個人情報を、国防省の統合人事管理システムから「引き出し」たとされる。
その後、保釈申請が棄却されたため、カリフ被告は「カテゴリーB」に分類されているワンズワース刑務所に再勾留され、7月にはビデオリンクで出廷した。
脱走した際には、11月のウーリッチ刑事法院での裁判を待っている状態だった。
国防省によると、カリフ被告は「これらの罪状で再勾留となったため」、罪が確定していないにもかかわらず、今年5月に軍を除隊処分となった。
なぜ厳重警備の刑務所にいなかったのか?
カリフ被告がロンドン南東部ベルマーシュの刑務所ような厳重警備の施設ではなく、警備の緩やかな刑務所に収容されていたのは適切だったのかどうか、政府内では内々に疑問が投げかけられている。
最大野党・労働党のシャバナ・マフムード影の司法相は、政府は「潜在的に危険な犯罪者を勾留しておくという基本的な仕事がどうしてできないのか、早急に説明する必要がある」と述べた。
一方、アレックス・チョーク司法相は、脱走についての捜査を指示。「刑務所のセキュリティーについての再確認」を求めた。
チョーク司法相はすでに刑務所・保護観察サービスやワンズワース刑務所の所長らと会談し、なぜカリフ被告が警備の厳重な刑務所に勾留されていなかったのか、警報が鳴った際に正しい手順が守られていたのかなどについて聴取した。
この件については、首相官邸も報告を受けているとみられている。
刑務所でのテロ対策について政府に助言し、1990年代にはワンズワース刑務所の警備責任者を務めていた司法専門家イアン・アチソン氏は、今回の脱走は「非常に深刻なもの」だと述べた。
BBCニュースの取材に対しアチソン氏は、カテゴリーBの刑務所は「テロ罪で起訴され、潜在的に国家安全保障上のリスクがある人物にとって最良の場所ではない」と語った。
脱走は非常にまれ
イギリスでは、刑務所からの脱走は近年ではまれだ。2017年以降ではわずか5件、2010年以降でも20件に満たない。
最後に世間を大きく騒がせたのは、テロ犯罪で収監されたアイルランド共和軍(IRA)の受刑者たちが1994年、ホワイトムーア刑務所から脱走した事件だ。
一方で、2022年1月に刑務所視察局が発表した報告には、2019年にワンズワース刑務所で「重大なセキュリティー違反が脱走につながった」という記述がある。
報告書によると、視察官は「さらなる脱走を防ぐための対策が取られていることをある程度保証する」としながらも、「現在のセキュリティーデータからは、その物理的側面においていくつかの懸念がうかがえる」と述べている。
カリフ被告の脱走直後、ワンズワース刑務所は封鎖されたが、現在は解除されている。