米下院、債務上限引き上げ法案を圧倒多数で可決

US House Speaker Kevin McCarthy at the US Capitol on 31 May 2023

画像提供, Getty Images

画像説明, 債務上限引き上げを可能にする法案の下院通過を喜ぶマカーシー下院議長(31日、米連邦議会)
Published

アメリカの連邦議会下院は5月31日、連邦政府の債務上限を一時的に引き上げることを可能にする法案を可決した。上院でも可決され成立すれば、米政府は借金を増やして国債の元利金を期日通りに支払うことなどが可能になり、債務不履行(デフォルト)を回避できる。

下院が可決した法案は、債務上限を2025年1月まで凍結する内容。

野党・共和党が過半数の下院(定数435)は、賛成314、反対117でこの法案を可決した。共和党議員222人、民主党議員213人のうち、どちらからも反対議員が出た。法案を支持したのは、共和党議員149人、民主党議員165人だった。

法案はこの後、連邦議会上院が審議する。

米財務省は、債務上限が引き上げられなければ、6月5日にも資金が枯渇(こかつ)し、債務不履行に陥ると警告している。アメリカの債務31兆4000億ドルと元利金の安定した支払いは、国際金融システムを下支えするものとなっている。

与野党が拮抗(きっこう)する上院(定数100)と異なり、下院では共和党が10議席差で多数のため、ジョー・バイデン大統領(民主党)とケヴィン・マカーシー下院議長(共和党)が5月28日に合意に達するまで、債務不履行の危険が大いに懸念されていた。共和党は、債務拡大に強く反対するとともに、債務上限を現在の31兆4000億ドルから引き上げることと引き換えに、教育予算や社会事業予算などの削減を求めていた。

アメリカでは連邦政府の債務額、つまり借金できる額の上限が法律で決まっている。このため、借入可能額の上限を引き上げるには、新たに法律を成立させなくてはならない。連邦政府の資金が枯渇し、債務不履行に陥った場合、国内的には連邦政府職員の給与や福祉手当などが払えなくなる。長期的にはアメリカ経済が景気後退へと陥り、この影響で失業率が上昇するなど、さまざまな負の影響が出る。

さらに、金融市場ではアメリカの国債の元利金が払われずに混乱が生じる。アメリカのドルが世界の基軸通貨なため、世界の金融市場はパニック状態となり、多くの商品の値上がりにつながるおそれがある。

両党内で抵抗

超党派の議会予算局によると、法案が成立すれば今後10年間で1.5兆ドルの予算削減につながる。

ただし、共和党と民主党の両党から反対の声が出ているため、成立が危ぶまれていた。

教育や福祉などのさまざまな分野で予算削減を求めていた共和党内の超保守派は、債務上限凍結への合意と引き換えに得られた成果が少なすぎると反発。その一方で民主党には、学生ローンの再開や食事支援提供に勤労の条件をつけるなどといった譲歩内容に、反対する議員たちがいる。

民主党のエマニュエル・クリーヴァー議員(ミズーリ州)は、自分は法案に賛成するものの、「悪魔のサンドイッチのおかわりのようなもの」だと批判した。

共和党のナンシー・メイス議員(サウスカロライナ州)は、「共和党は何も得られなかった」として、法案に反対するつもりだと述べていた。

共和党幹部のマカーシー議員は、与野党両党の中道派の票を固めることで、法案を可決に持ち込んだ。連邦予算の借金拡大を抑制する取り組みのうち、今回の法案は「小さい一歩」に過ぎないとも話した。

続いて法案を審議する上院では、すでに共和党のマイク・リー議員(ユタ州)が「ありとあらゆる審議手続き上の道具」を使い、審議を遅らせるつもりだと述べている。

無所属で、議決については民主党と共に行動することの多いバーニー・サンダース議員(ヴァーモント州)も31日、自分の良心が法案支持を許さないと述べた。

しかし上院でも与野党幹部が法案成立へ向けて連携を続けている。デフォルト回避のため、週末中にはバイデン大統領が法案に署名し、成立させる必要がある。

連邦政府がここまでデフォルトに迫ったのは2011年以来。信用格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は当時、アメリカの長期信用格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げた。米国債が最上級の格付けを失うのは史上初のことだった。S&Pはこの「AAプラス」格付けを現在も維持している。

31日の下院採決に先駆け、アメリカの株式市場はダウが134ドル(0.4%)安、S&P500が0.6%安、ナスダックは0.6%安で取引を終えた。