イギリス軍の機密書類、ケント州のバス停で見つかる BBCが内容を確認
ポール・アダムス国防担当編集委員

画像提供, PA Media
イギリス軍の機密書類が、イングランド南東部ケント州のバス停で発見された。
問題の書類は、バス停の裏で22日早朝、ぬれた状態で見つかった。50ページ近くあり、2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島沖を、イギリスの駆逐艦「ディフェンダー」が23日に航行する計画について、ロシアの反応を議論した内容が含まれていた。
また、アメリカ主導の北大西洋条約機構(NATO)軍がアフガニスタンから撤退した後、イギリス軍が駐留する可能性を検討したものもあった。
書類を発見した匿名希望の人物は、自分の見つけたものが機密情報だと気付いた後、BBCに連絡してきた。
書類には電子メールやパワーポイントのプレゼンテーション資料などが含まれている。国防省の高官の事務所にあったものとみられる。
イギリス政府は、この発見について調査を開始したと発表した。
国防省は、「一般市民によって国防にまつわる機密書類が発見された事案について」調査していると述べるとともに、国防省職員が紛失を届け出ていたことを明らかにした。
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ロシアは2014年にクリミア半島を一方的に併合したが、国際的には認められていない。
ロシア政府は、クリミア半島とその海域はロシアの領土であると主張している。イギリスは駆逐艦について、国際的に認められた一般的な航行ルートである、ウクライナの海域を通過していたとしている。
駆逐艦ディフェンダーは23日、ウクライナ南部オデッサからジョージアに向けて、クリミア半島の南側を航行した。これに対し、ロシアは軍機20機以上と沿岸警備隊の船2隻で追尾した。ロシア国防省はこの日、同艦に対し巡視船から警告射撃を行い、ジェット機が爆弾を周辺に投下したと発表した。一方、イギリス政府はロシア側の説明を否定し、警告射撃もなかったとしている。
今回発見された書類に含まれていた、ディフェンダーのクリミア沖航行に関する資料では、この計画を「純粋にウクライナ領海を航行するだけのもの」だと説明。ロシアが攻撃的な反応を見せる可能性があったとし、兵器は覆いで隠し、搭載しているヘリも格納した状態で行われたと述べている。
2つのルートを計画
書類によると、「ディトロイト作戦」と名付けられたこの計画は、21日まで高官レベルの議論だった。
高官らは、ディフェンダーがクリミア近くを航行した際にロシアがどういった反応を起こすのかについて推測を行っていた。
議論の中で、イギリスの常設統合司令部(PJHQ)のある高官は、「起こり得る『歓迎パーティー』について何が分かっているか?」と質問している。
この点について書類では、地中海東部で最近発生した、ロシア軍と、英海軍の空母クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群とのやり取りが顕著なものではなかったとし、今回も同様のものとなることが予想されると論じられている。
ただ、そうした状況は近く変わると関係者はわかっていた。
あるプレゼン資料では、「国防活動から作戦活動に移行していることから、ロシア海軍および空軍の活動は、今後さらに頻繁かつ積極的になってくる可能性が高い」と警告している。

PJHQによるプレゼン資料では、2つの航路が提示されていた。
1つは、クリミアの南西端近くを分離通航方式(TSS)で航行する「安全かつ意図的に、オデッサからバツミへ直接移動する」ルートと説明されている。
この航路では、「イギリスがウクライナの領海と認識している海域で、ウクライナ政府と接触する機会が生まれる」とされている。
また、この航路に対するロシアの反応は「安全かつ意図的なもの」から「安全でも意図的でもないもの」の3段階で予測されていた。
実際には、ロシアは攻撃的な反応を見せ、無線で警告したり、警備艇が100メートル以内まで接近したりした。戦闘機も出動させた。
もう1つの航路は、該当の海域を大きくそれて航行するものだった。これについて資料では、衝突は避けられるものの、ロシアが「イギリスが怖がって逃げ出した」と見てとり、イギリスがロシアのクリミア沖領有を認めたと主張するきっかけを与えかねないと指摘している。

さらに、国防省高官らが航行計画に加え、ロシアと衝突した場合についても議論していたこともうかがえる。
書類からは、高官らが「我々は強力かつ妥当な説明ができる」と述べるとともに、ディフェンダーに同乗しているBBCと英紙デイリー・メールの記者らによって、「ディフェンダーの行動に独立的な検証が加えられる」と話していたことがわかる。
書類はまた、ディフェンダーのTSSによる航行はリスクがあったものの、ウクライナへの支援を示すためにイギリス政府が計算の上で取った決定であったことを示している。
アフガニスタンに関わる「極秘書類」も
発見された書類の大半は「official sensitive(公式、機密)」という、比較的機密度合いの低い内容だった。イギリス政府によると、この分類では「『知る必要がある』ことを示すには、明確かつ正当な要請が必要」となるという。
しかし、中にはベン・ウォレス英国防相の私設秘書宛で、「Secret UK Eyes Only(秘密、イギリス人のみ閲覧可能)」と書かれた、極秘扱いの書類も含まれていた。
この書類では、アフガニスタンからの米軍とNATO駐留軍の撤退決定を受け、イギリス軍がアフガニスタンに駐留すべきだと議論。アメリカが、アフガニスタンのいくつかの地域でイギリスに支援を打診していることや、イギリスの特別部隊が同国に残るべきかどうかなどについて意見が述べられていた。
英国内ではすでに、イギリス軍が一部駐留を続けるのではないかと報じられている。
この書類の機密性の高さや、アフガニスタンの各国駐留軍の安全性を鑑み、BBCはその内容について詳しく報じないことを決定した。
しかし同国の安全保障が悪化している中で、この書類にも警告が含まれている。
それによると、「アフガニスタンにイギリス軍がどんな形で残っても(中略)複雑な関係者ネットワークからぜい弱な標的と見なされる」ため、「完全撤退という選択肢も残っている」という。
また、NATO軍の撤退により、「英米軍がアフガニスタン全土で保持してきた状況認識がすでに弱められている」と指摘。
2020年のアメリカと武装組織タリバンの和平合意以降、イギリス兵は亡くなっていないが、「この状態がいつまでも続くとは考えにくい」としている。
「早急な調査を」
発見された書類にはこのほか、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後のヨーロッパの同盟国との関係についての分析や、21日に行われたばかりの英米国防会議の内容なども含まれていた。
ある書類では、ウォレス国防相が欧州6カ国からなる武器共同調達機関(OCCAR)について、欧州委員会の「潜入」に「ハイジャックされてはいけない」と懸念を述べていた。
また英米国防会議の書類では、ジョー・バイデン米政権が中国とインド洋・太平洋地域に注目していることについては、「前政権からの継続が多い」と分析。
「この会議では、バイデン政権がどれだけ情報共有の準備をしてきたか、あるいは同盟国との協議を増やしたいという発言が、実際はともかく理論として真実なのかどうかを見極めるべきだ」と指摘している。
これほど多岐にわたる重要文書が紛失した例は少なく、国防省にとっては大きな失態といえる。
最大野党・労働党のジョン・ヒーリー影の国防相はウォレス国防相に対し、早急に調査を行い、今週中に下院で報告し、イギリスの国防計画が危険にさらされていないことを示すべきだと述べた。






