ウィル・スミス氏主演映画、米ジョージア州での撮影中止 投票制限の州法受け

Will Smith

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米俳優ウィル・スミス氏主演の奴隷制度を描いた映画「エマンシペーション」が、米ジョージア州での撮影を中止した。

ジョージア州では先に、選挙での投票を制限する州法が成立したが、これに抗議する格好。同法についてスミス氏は、「後退的な投票法」だと批判している。

「2021年公正選挙州法」は、期日前投票や郵便投票の実施方法を従来よりも制限したり、投票所で行列する有権者に水や食べ物を提供してはならないと規制したりしている。特に社会的に恵まれない有権者に負担をかけるものだとして、批判が出ている

スミス氏は、アントワーン・フークア監督と共に芸能情報サイト「Deadline」に声明を発表。同法制定を受けて「動かざるを得ない」と感じたと語った。

「我々は道義上、有権者のアクセスを制限する後退的な投票法を制定するような政府に対し、経済的支援を提供することはできない」

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「エマンシペーション」でスミス氏は、奴隷として働かされていたルイジアナ州の農園でひどい虐待を受け、逃げ出してきたピーターを演じる。

ピーターは北へ向かって過酷な旅を続け、南北戦争では北軍で従軍した。

映画は史実に基づいたもので、背中にむちの跡が残るピーターの写真が、従軍中の健康診断の際に撮影されている。

この写真は1863年に公開され、奴隷制度廃止論を後押ししたほか、解放された多くの黒人が北軍に加わった。

「Deadline」によると、「エマンシペーション」のプロデューサーは、映画製作会社や関係者、ジョージア州の政治家、同州の投票権活動家ステイシー・エイブラムス氏などと何週間にもわたって協議を重ね、撮影撤退を決定した。

撮影は6月に開始予定だった。

「2021年公正選挙州法」とは

ジョージア州では今後、郵便投票の用紙を請求する際に身分証の提示が必要になる。

同法の支持者は、郵便投票をより安全にする施策だとしているが、白人に比べ身分証を所持する人の少ない黒人を不当に扱うものだとの批判が出ている。

また、投票所で順番待ちをする有権者への水や食料の提供を禁止するほか、期日前投票のため州内各地に設置される「投票箱」の数を制限する。これにより、従来より遠出しないと投票できない有権者が増える。さらに、すべての決選投票について期日前投票の期間が短縮される。

民主党のジョー・バイデン米大統領は、新しい州法の規制が、とりわけアフリカ系有権者に負担をかけるものだと非難。かつて南北戦争後の南部諸州で黒人差別と人種隔離を制度化したいわゆる「ジム・クロウ法」を想起させる「21世紀のジム・クロウ」で、「合衆国憲法へのあからさまな攻撃だ」と述べた。

一方、ジョージア州の上下院で過半数を占める共和党は、投票手続きを簡素化し、投票システムへの信頼を取り戻すための法律だとしている。

動画説明, 【米大統領選2020】 アメリカでは黒人の投票権は抑圧されている?

他の映画も撤退か

この法律の制定を受けて同州から撤退する映画は「エマンシペーション」が初めてだが、他の映画もこれに続く可能性がある。

「インディー・ジョーンズ」シリーズの新作を手掛ける予定のジェイムズ・マンゴールド監督は先に、ジョージア州では今後、自分の作品は撮影しない予定だと語っている。

マンゴールド監督は、「ジョージア州は金を使い、人々に投票を許している他の州から映画の仕事を奪っている。私はそこでは働きたくない」とツイートしている。

スター・ウォーズに出演しているマーク・ハミル氏はこのツイートに賛同し、「#NoMoreFilminginGeorgia (ジョージアではもう撮影しない)」というハッシュタグを使用した。

ジョージアの映画委員会によると、同州では「世界中のどこよりも」大ヒット映画が撮影されている。近年では「デッドプール」や「アベンジャーズ エンドゲーム」、「ワンダビジョン」、テレビドラマの「ストレンジャー・シングス」や「ウォーキング・デッド」などの撮影地となった。

映画・テレビ産業は現在、年間100億ドル(約1兆円)の収入をジョージア州にもたらしている。

一方で、同法に反対している投票権活動家エイブラムス氏は米映画業界に対し、一度に撤退しないでほしいと訴えている。

米公民権運動の代表的な存在だった故マーティン・ルーサー・キング牧師の娘、バーニース・キング牧師も、再考を訴えている。

「お願いだから#BoycottGeorgia(ジョージアをボイコット)の議論をやめてほしい。中流階級の労働者や貧困にあえぐ人たちに被害がおよぶ。それが人種差別と階級差別の被害をさらに拡大させるので」