【検証】 プーチン氏の周りで撮影される人たち……顔認証ソフトの判定は
ジェイク・ホートン、アダム・ロビンソン、ポール・マイヤーズ BBCリアリティーチェックおよびBBCモニタリング

画像提供, EPA
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が公の場で撮影されると、周りにはいつも同じ人たちがいる――と、ソーシャルメディアでうわさになりがちだ。最近では、昨年大みそかに公表された集合写真について、プーチン氏の背後にいるのは本物の軍人ではない、以前にもプーチン氏と一緒に撮影されていたなどのうわさがとびかった。果たして本当にそうなのか。顔認証ソフトウェアで検証する。
プーチン大統領が何かのイベントで記念撮影すると、並んで写る人たちは実際の出席者ではないということが、しばしば繰り返されてきた。
BBCロシア語が2020年に調査した際には、その場でたまたま自然に行われ、たまたま撮影されたように見えるプーチン氏と一般市民のやりとり場面は、実は友好的な地元当局関係者でいっぱいだったと判明することが何度かあった。
そばにいる金髪女性

ソーシャルメディアでの投稿、あるいは英紙サンや同デイリー・メールなどは、同じ金髪女性が複数のイベントで様々な役割を演じて、プーチン氏の近くで写真に納まっていると主張した。2016年の漁船での写真、2017年の教会での写真、そして2022年末のロシア軍施設の写真で。
ウクライナの新聞記事を含めて、この女性はロシアで要人警護に当たる連邦警護庁(FSO)の職員ではないかという意見もある。

そこで私たちは顔認証ソフトウェアを使い、大みそかの写真の女性と、2016年や2017年の写真の女性を比較してみた。その結果、一致率は2016年の写真の女性とは29%、2017年とは28%と、それぞれあまり高くなかった。
英ブラッドフォード大学ビジュアルコンピューター技術センターのハッサン・ウゲイル教授は、「同一人物だと特定するには、通常は一致率75%以上を目指すものだ」と話す。
次に、2016年の写真と2017年の写真を顔認証ソフトで比較した。この一致率は99.1%。つまり、2つの写真の女性が同一人物だという可能性はきわめて高い。
ロシア・メディアはこの女性を「ラリサ・セルグヒナ」と特定している。どちらのイベントもノヴゴロド州でのもので、セルグヒナ氏は「統一ロシア」党に所属する現地の州議会議員だ。統一ロシア党は、プーチン氏を支持している。
2016年の漁船での写真を、統一ロシア党サイトの公式プロフィール写真と顔認証ソフトで比較してみると、一致率は99.8% だった。セルグヒナ氏はさらに、ノヴゴロドにある水産会社の創業者として登録されている。
プーチン氏が大みそかに新年の演説をした際に、そのすぐ後ろにいた女性は、ロシア報道によると、軍医のアンナ・セルゲエフナ・シドレンコ大尉だという。ロシア紙イスヴェスティアがオンラインに掲載したインタビュー動画からとったシドレンコ氏の写真と、大みそかの写真を比較すると、一致率は99.5%だった。ウクライナ情報当局が公表したロシア軍連隊の名簿にも、シドレンコ氏の名前がある。
漁師
私たちは次に、2016年にプーチン氏と一緒に撮影された、魚釣り用の服装をした男性たちについてのうわさを検討した。
同じ顔ぶれが、2017年に教会でもプーチン氏と一緒に写真に納まっているというのだ。

漁船の写真と教会の写真に納まる男性たちの顔を顔認証ソフトで調べると、4人全員について一致率は99%以上だった。そこで私たちは、4人が誰なのかを調べた。
その結果、4人全員がノヴゴロド州で働き、そのうち少なくとも3人が漁師らしいことが分かった。
写真の(1)はアレクセイ・リャシェンコ氏。プーチン氏と一緒に写真に写った漁師たちのリーダーだ。これは、本人がソーシャルメディアに書いているほか、オンラインで公表されている漁船クルーのプロフィール紹介で確認した。
写真の(5)はエフゲニー・リャシェンコ氏で、(1)アレクセイ氏の息子だ。漁船乗務員紹介に同じクルーの一員として書かれている。アレクセイ氏とエフゲニー氏は共にソーシャルメディアにアカウントを持ち、そこから2人が親子だと確認できる。
同じ乗務員紹介から、漁師たちが地元の農水産協同組合「エヴロヒムセルヴィス」に所属していることも分かる。この協同組合の副理事長が、写真の(3)に当たるラリサ・セルグヒナ氏だ。
ロシア報道によると、写真の(2)のセルゲイ・アレクサンドロフ氏は漁師だという。ソーシャルメディアで見つけたアカウントには、漁師の服装をして船に乗っている写真が投稿されていた。

画像提供, VK
(4)の男性については、ソーシャルメディアのプロフィールを見つけられなかった。しかし、この男性の顔に一致する写真は見つけた。この投稿には別の人が、「どうやってプーチンと会ったの?」とコメントしており、それには「ノヴゴロドで仕事中、何度かプーチンと会った」と答えがついている。

オンラインの別の写真は、ノヴゴロド州の漁師2人がスタヴロポル州では農業関係者のふりをしてプーチン氏と撮影されていると主張している。しかし、農家の2人と漁師の2人を顔認証ソフトで比較すると、一致率はどちらも8%以下だった。
アイスクリーム売り
プーチン大統領が出席するイベントに居合わせる金髪女性が、実は仕込みの俳優ではないのかという指摘は、ほかにも複数ある。たとえば、2017年と2019年の航空ショーでプーチン氏にアイスクリームを出した女性が、同一人物ではないのかというのだ。

2枚の写真はどちらも横顔で、解像度も低い。そのため顔認証ソフトは信用できず、ここでは使えない。
しかし私たちは、ロシアのテレビによる2019年のインタビュー動画を発見した。その中で1人の女性が、2017年と2019年の2回とも、プーチン氏にアイスクリームを出したのは自分だと話している。
本当に2枚の写真の女性が同一人物だとすると、特に意外なことではない。間に2年が開いているとしても、同じ航空ショーでのことだからだ。
さらに、この同じ女性が2022年には航空会社アエロフロートのスタッフとしてプーチン氏と一緒に写っているという主張もあるが、この写真についても顔認証ソフトの比較は信用できない。
昨年5月には、プーチン大統領が病院で会った負傷兵は、かつて工場でプーチン氏と会っていたという指摘もあった。
しかし、病院と工場での写真を顔認証ソフトで比較すると、一致率は約25%。つまり、同一人物とは言えないという結果だった。
(追加取材: オルガ・ロビンソン 画像:ヤナ・タウシンスキ)









