バンクシー作品の清掃や整備費用、公費から15万ポンド近く BBCの情報開示請求で明らかに

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アンソニー・ウォード記者(ブリストル)
世界的な覆面芸術家バンクシーによる作品3点の清掃や整備に、イギリスの納税者の税金が15万ポンド(約3200万円)近く使われてきたことが、BBCの取材で明らかになった。こうした費用は、今後さらに増える見込みだという。
最近で特に費用がかかったのは、2025年9月にロンドン中心部にある王立裁判所の建物に描かれた壁画に関するものだった。撤去作業と警備にこれまでに、計8万5000ポンド以上が使われている。
同裁判所の建物は、法的に保護されている指定建造物の「グレード2」に認定されている。英法務省によると、この建造物の壁からペンキを除去するのに5万ポンドかかった。さらに、規定時間外の作業と警備の費用として、3万5300ポンドが支出された。
BBCの情報公開請求を通じてこうした公的支出が明らかになったことで、バンクシーの作品が破壊行為なのか、それとも価値ある公共芸術なのかという議論が再燃する可能性が高い。
1990年代にイングランド西部ブリストルのグラフィティーシーンから登場し、世界で最も有名なストリートアーティストの一人となったバンクシーの作品は、壁画や路上に設置されるものが多い。しばしば一夜にしていきなり出現し、大勢の注目を集める。
王立裁判所に登場した壁画では、イギリスの裁判官を特徴づける、伝統的な白いかつらと黒い法服を身に着けた判事が、地面に横たわる抗議者を小槌(こづち)で殴打し、抗議者が持つプラカードに血が飛び散る様子が描かれていた。
バンクシーは自身のウェブサイトとインスタグラムに壁画の写真を投稿し、自分の作品だと主張した。
清掃、警備、手すりの設置……
王立裁判所・審判所サービス(HMCTS)の報道官は当時、「王立裁判所は指定建造物であり、HMCTSには本来の外観を維持する義務がある」と述べた。
また、ロンドン警視庁は、「9月8日の月曜日、王立裁判所の側面に器物損壊の通報があった」と認め、「現時点では逮捕者は出ておらず、捜査は継続中だ」としていた。
裁判所の職員は現場周辺をバリケードで封鎖し、警備にあたった。壁画の清掃作業は直ちに開始された。

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歴史的な裁判所に絵を描いたバンクシーの行為は、賛否両論を呼んでいる。
最大野党・保守党のニック・ティモシー影の法相は、「何万ポンドかそれ以上の税金が、バンクシーの後始末に使われるなど、言語道断だ。本人は、公共の建物を汚損しても罰せられないと信じているようだ」と述べた。
「我が国の裁判所は、正義と法の支配の象徴だ」、「バンクシーの破壊行為は止めさせるべきであり、彼が他人に与えた損害の費用は彼自身が負担すべきだ」とも、ティモシー氏は主張した。
一方、美術評論家のエステル・ロヴァット氏はバンクシーの作品を擁護する。観光への貢献を指摘し、「バッキンガム宮殿を訪れる人もいれば、バンクシーのアートを見に行く人もいる」と述べた。
「彼の作品は、政治が私たちを分断するような形で人々を結びつける。彼はまるでハーメルンの笛吹き男か、タウン・クライヤー(街頭で公告を行う役人)のようだ」
「自分の建物に壁画が描かれると、人だかりができるという意味で、圧力を感じるかもしれない。けれども、バンクシー作品を見るのに入館料はかからないので、彼はアートを身近なものにしてくれる」
なお、バンクシーが歴史的建造物に作品を描いたのは王立裁判所が初めてではない。
彼がブリストルで制作した初期の作品は、18世紀に建てられたジョージアン様式の住宅に描いた、窓からぶら下がる男性の壁画だった。

王立裁判所では、塗料をこすり落とす作業が完全には成功しなかったため、現場では「レーザー技術」を用いて作業を行っている。
作業終了後には、この地域の行政を管轄するウェストミンスター・シティ・カウンシルが壁を検査する予定だが、結果が不完全と判断された場合は、別の清掃方法を用いる必要がある。最終手段として、影響を受けた石材を取り外して交換する必要があるかもしれない。
また、バンクシーが作品を残した壁に手すりを設置するため、指定建造物保存許可申請が提出されている。しかし、仮に承認が下りたとしても、手すりの設置費用はまだ分かっていない。
作品の保全にも費用が
王立裁判所の壁画以外にも、バンクシーの作品について公共機関が清掃や警備の費用を負担した例は多い。
今年4月、ロンドン・トラファルガー広場近くのウォータールー・プレイスに突然、旗を持った男性の像が現れた。男性の顔は手に持った旗で完全に覆い隠され、前へ歩こうとして今にも台座から転落しそうな様子だ。
バンクシーは、夜間にこの像を設置する様子を映した動画をインスタグラムに投稿し、自身の作品だと明らかにした。
ウェストミンスター・シティ・カウンシルは、この像の存在を事前に知らなかったと述べている。また、安全柵の設置や事務手続き、警備員の人件費などに約6万ポンドがかかったという。

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BBCの情報公開請求に対し、ウェストミンスター・シティ・カウンシルは「像の所有権は現在、土地を所有するカウンシルにある」と回答。「アーティストの代理人に対し、短期、中期、長期の選択肢を検討していることを通知した」と述べた。
BBCはこの回答について、さらに説明を求めている。

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2024年8月、バンクシーはロンドン市内各地に、ヤギ、ゾウ、ゴリラ、サル、ピラニア、サイ、ペリカンなど動物の絵を次々と連作した。
シティ・オブ・ロンドン警察のポリス・ボックス(警察直通電話が中にある設備)には、泳ぐピラニアが描かれた。このポリス・ボックスは1990年代、カトリック系過激組織アイルランド共和軍(IRA)がロンドン市内で攻撃を行った後に導入された治安対策の一環。
バンクシーが絵を描いた後、シティ・オブ・ロンドンはこの作品を「安全な場所」に移動させたと発表した。ポリス・ボックスの撤去には2200ポンドの費用がかかり、その後、二度と元に戻されることはなかった。
ポリス・ボックスは現在、保管庫に収められており、今年11月にロンドン博物館が再開する際に展示される予定だという。
こうした作品は、バンクシーがブリストルで知られるようになってから30年以上たった今もなお、その影響力が衰えていないことを改めて示している。ブリストルでは今もなお、バンクシーが残した壁画が、市内でも有数の観光名所となっている。















