FIFA、外部投資導入の計画撤回 サッカー界の強い反発受け

紺色のスーツ姿でワールドカップ決勝戦の会場にいるインファンティーノ氏

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画像説明, ジャンニ・インファンティーノ氏は2016年2月からFIFA会長を務めている
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ジャック・スケルトンBBCスポーツ上級記者、サイモン・ストーン・サッカーニュース主任記者

国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長は1日、FIFA主催の主要大会について株式を売却するという外部資金導入計画について、サッカー界の強い反対を受け、計画を撤回したと述べた。

インファンティーノ会長は、このプロジェクトが当初の目的とは「もはや相容れない」「分裂を生み出してしまった」ことが明らかになったと述べた。

「その結果として、この提案は実行されない」と会長は表明した。

インファンティーノ会長はこれまでFIFAに加盟する全211協会に対し、男子ワールドカップ(W杯)と女子W杯を含む大会への民間投資受け入れを支持するなら、最大4000万ドル(約60億円)の資金を提供すると提示していた。

欧州サッカー連盟(UEFA)に加盟する55の協会は30日、この計画が実行されるならW杯をボイコットすると、全会一致で決議した。

UEFAの決定に続き、CONCACAFも同日、UEFAと同様に加盟する41の協会が集まり、インファンティーノFIFA会長の提案を「拒否した」と発表。アジア・サッカー連盟(AFC)も31日、欧州および北中米カリブ海地域の連盟と「連帯する」と表明した。

FIFAのケヴィン・ラムール最高執行責任者は、FIFA幹部たちでさえ、会長の案について「だまされていた」と発言した。

インファンティーノ会長のグローバル戦略・ガバナンス担当上級顧問だったカルロス・コルデイロ氏は31日、この件を理由に辞任。計画は「サッカーにとって悪い取り決め」で、「サッカーの未来を抵当に入れることになる」と批判した。

イギリスのアンディ・バーナム首相は、FIFA会長としてインファンティーノ氏は「不適任だ」と発言した。

56歳のインファンティーノ氏は、来年3月に開かれるFIFA総会で4期目の会長再選を目指しているが、非常に大きなプレッシャーにさらされる事態となった。

会長は計画撤回の発表と共に、サッカーにおける「共通の利益」という精神のもと、「関係者全員を再び結集させる」つもりだと述べた。

会長案は否決の可能性が高かった

UEFAとCONCACAFが会長の計画に反発してW杯ボイコットを30日に表明したにもかかわらず、FIFAは当初31日の時点でも、「誰もサッカーを売り渡してなどいない」として、計画を推進するつもりだとコメントしていた。

しかし、計画中止を発表するにあたり、インファンティーノ会長はFIFA加盟協会の過半数の支持が必要だと認めた。つまり、211の加盟協会のうち106協会が賛成票を投じる必要があったわけだが、AFCがUEFAやCONCACAFに加わって計画に反対したことで、その可能性は低くなった。

UEFAは55票、CONCACAFは35票、AFCは46票を持つ。それぞれの全加盟協会が統括団体の意向に沿った場合、計136票がインファンティーノ氏の計画に反対したことになる。

アフリカ・サッカー連盟(CAF)とオセアニア・サッカー連盟(OFC)は、FIFAの計画について8月に協議すると述べていた。

南米サッカー連盟(CONMEBOL)は、FIFAに対し、提案の「範囲、構造、統治、および起こりうる影響」に関して「追加情報と説明」を求めたと述べた。

会長の計画とは

FIFAとインファンティーノ会長は、W杯を含む主要イベントを運営するための商業子会社を設立し、外部投資家がその株式を買えるようにしたいと考えていた。

新子会社はFIFAフォワード・エンタープライズ (FFE)と呼ばれる予定で、「少数株主による非支配的な投資」を第三者に呼びかけるとFIFAは発表した。

インファンティーノ会長はFIFA加盟国に対し、自分の案を支持すれば最大4000万ドル(約60億円)の資金を提供すると、書簡で提示した。同会長は、加盟国が最初の2000万ドルを受け取りたいなら、9月19日までに自分の計画を受け入れるよう期限を設けていた。

米投資銀行JPモルガンが作成した25ページの文書は、FIFAのトーナメントがどのように拡大し、2035年から2039年のサイクルで加盟協会1団体あたり推定2400万ユーロの賞金増額を達成するかを説明していた。

そこには「新しい事業構想」や「インセンティブ報酬による優秀な人材の獲得」といった項目が挙げられていた。

この文書は、W杯が「最も広く視聴されている」スポーツイベントだが、対照的にFIFAは「収益化が不十分」だと指摘していた。

文書には女子の試合についての記述は一切なかった。

FIFAによると、計画が承認されれば米ベンチャーキャピタル「スライヴ・エターナル」がFFEの投資家らを率いる見込み。スライヴ・エターナルは、ドナルド・トランプ米大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏の弟、ジョシュア・クシュナー氏が設立した。

トランプ大統領は31日に初めてこの計画について言及し、インファンティーノ氏とはこれについて話していないと述べた。

トランプ氏が2025年に2期目の大統領として就任して以来、両氏は親密な関係を築いてきた。

インファンティーノ氏は会長として残れるか

インファンティーノ氏は2016年、AFC会長のシェイク・サルマン・アル・ハリファ氏を115対88の票差で破り、FIFA会長に就任した。

FIFAの次期会長は、来年3月にモロッコで開催される第77回総会で決定される。立候補者は11月18日までに立候補届を提出する必要がある。

今週までは、インファンティーノ氏が無投票で再選されると予想されていた。ヨーロッパを含む世界中の協会が、すでに彼に投票する意向を表明していた。

今週の出来事によって、各協会が一斉に支持を取り消すのかは、まだ不透明だ。

インファンティーノ氏は今回の声明の中で、自分の計画は加盟団体の強化を目的としたもので、「特に支援が最も必要とされている国々」に焦点を当てていると改めて強調。「私たちの目的は常に、そしてこれからも、団結して向上することにある」とした。

しかし、会長の提案は明らかにFIFA内部を分裂させた。

2026年W杯の開催に向けた米ホワイトハウスのタスクフォースで国際統括団体を代表していたコルデイロ氏は、この計画を巡って辞任したFIFA初の幹部となった。

コルデイロ氏は長文の声明の中で、この計画に「断固として」反対すると述べ、FIFAが「より大きな価値を引き出す」ために外部投資家を必要とするという「提案を受け入れない」と主張した。また、自分はこの提案には一切関与していないとも述べた。

会長の計画によって100億ドルの資金調達が実現した可能性も指摘されているが、これについてインファンティーノ氏は、FIFAの副会長8人にさえ、全員には自分の計画について事前に何も知らせていなかった様子。

FIFAのラムール最高執行責任者はこれを「1人の人間による計画」と呼び、「会長は大勢をひとつにまとめて団結させ、鼓舞しなければならない」が、これは「その逆だ」と声明で書いた。

「これで私が職を失うこととしても、それはそれで仕方がない」とラムール氏は言い、「その決定を理解し、尊重する。少なくとも今夜はぐっすり眠れるだろう」と述べた。

時系列でみる

・7月27日(月)

FIFAのインファンティーノFIFAが自分のインスタグラム・アカウントに15枚のスライドを投稿。自分を批判する人々に対し、自分のリーダーシップについて「憎悪や虚偽の噂を広める」のではなく、「瞑想したり、祈ったり、サッカーの試合を観戦したり」するよう呼びかけた。

・7月28日(火)

英紙タイムズとフィナンシャル・タイムズは、インファンティーノ氏がW杯をはじめFIFA主催大会の株式を民間投資家に売却する計画を立てていると報じた。

UEFAは、サッカーは「FIFAが売るべきものではない」とする初の声明を発表し、FIFAが「一線を越えた」と非難した。

FIFAは計画を正式に発表した。

・7月29日(水)

インファンティーノ会長はFIFA加盟211協会すべてに書簡を送り、自分の計画を支持すれば4000万ドルを提供すると伝えた。ただし、最初の2000万ドルを受け取るためには9月19日までに支持を表明する必要があるとした。

UEFAは「FIFAが我々のスポーツを利用して、自分たちや仲間の私腹を肥やし続けることは許されない」と批判した。

・7月30日(木)

UEFA加盟55協会は、インファンティーノ会長の計画が実行された場合、ワールドカップをボイコットすると決議した。

CONCACAFも、加盟41協会が会長案を「拒否した」と発表した。

・7月31日(金)

FIFAは「誰もサッカーを売り渡してなどいない」と反論し、計画を継続すると表明した。

AFCは、UEFAとCONCACAFに「連帯する」と表明したが、インファンティーノ会長の提案を明確に拒否することは避けた。

インファンティーノ会長のコルデイロ上級顧問が、「サッカーにとって悪い取り決めで、サッカーの未来を抵当に入れることになる」と抗議辞任した。

バーナム英首相は、インファンティーノ氏はFIFAを率いるのに「不適任者」だと述べた。

FIFAのラムール最高執行責任者氏は、FIFAの首脳陣さえこの計画について「だまされていた」と批判した。

・8月1日(土)

インファンティーノ氏はイギリス時間1日午前0時30分頃に声明を発表し、計画は実行されないと述べた。