「どうか助けて」 米ミサイルがタンカーに直撃、インド人乗組員から救助要請

トーマス・コープランド、シュルティ・メノン、アビシェク・デイ
イランによるホルムズ海峡の事実上封鎖とアメリカによるイラン海上封鎖が続くなか、制裁対象の石油タンカーが8日、オマーン沖でアメリカのミサイルに直撃された。インド人乗組員は当局に「助けてください」と救助要請を送り、船体から出火して沈みかけていると伝えた。BBCヴェリファイ(検証チーム)は、この遭難信号の内容を確認した。
米中央軍司令部は、パラオ船籍のタンカー「マリヴェックス」が米軍によるイラン海上封鎖に違反し、乗組員が米軍の指示に従わなかったため、「精密弾薬」を船に向けて発射したと説明した。
インド当局によると、乗組員24人全員がオマーン軍によって救助されたという。
米中央軍司令部によると、海上封鎖違反を理由に米軍が操業不能にした船は、マリヴェックスで7隻目だという。
2月末に米・イスラエルによる攻撃が始まり、イランは3月、通常なら世界の石油・ガス供給量の約 20% が通過する主要水路ホルムズ海峡を事実上封鎖した。米軍は4月、イランに対する海上封鎖を開始した。
インド港湾・海運・水路省のオペシュ・クマール・シャルマ氏によると、マリヴェックスは石油を積んでいなかった。最初に火災が発生したのはインド時間8日午後1時30分(グリニッジ標準時午前8時)頃だったが、出火原因については触れなかった。
米中央軍司令部は後に、空母エイブラハム・リンカーンの戦闘機「F-18スーパーホーネット」が「船の機関室と操縦室に精密弾薬を発射した」と認めた。
マリヴェックスの乗組員はBBCヴェリファイに、米軍のサン・アントニオ級軍艦に似た艦船が、攻撃後にマリヴェックスの前を航行する様子の画像を提供した。
船のエンジンが使えなくなり、船上で火災が発生したため、乗組員は遭難信号を発信し始めた。
「こちら、モータータンカーのミラヴェックス(中略)船上で火災が発生し、船が沈んでいます」と、船員は救助を要請した。インド前進海員組合(FSUI)がBBCヴェリファイに音声を提供した。
「米海軍の攻撃、ミサイルが我々の機関室を直撃。船底に穴があいている(中略)乗組員は24人で全員インド人。早く助けてください。すぐに助けてください」と乗組員は要請している。
FSUIはBBCに対し、この救助要請を受信したのはインド時間午後2時15分(グリニッジ標準時午前8時45分)だったと説明。その後、乗組員が撮影した動画をソーシャルメディア「X」に投稿し、ミラヴェックスの位置はオマーン沖28キロだと明らかにした。
全インド船員組合も、火災発生直後にタンカーの乗組員から遭難連絡を受けたと発表した。

在オマーンのインド大使館はグリニッジ標準時午前9時13分、事態の詳細を調べるために、FSUIのX投稿に返信した。
フライト追跡データによると、グリニッジ標準時午前9時55分頃、オマーン空軍のヘリコプター1機がマシラ島の空軍基地から離陸し、約20分後にマリヴェックスの位置に到着している。
内容を検証済みの動画には、乗組員がタンカーからヘリコプターへつり上げられる様子が映っている。映っているヘリコプターは、後にFSUIが共有した、救助後にオマーンのマシラ島にいた乗組員を撮影した写真に見られるものと一致している。
BBCヴェリファイは米中央軍司令部に対し、マリヴェックスを攻撃する前にオマーン当局かインド当局のどちらかに連絡したのかと質問したが、回答は得られなかった。

ミラヴェックスはかつてアリハントという船名で、イランとのつながりを理由にアメリカの制裁対象になっていた。アメリカは、船を所有するアリハント・シッピング社も制裁し、同船が「2025年7月以降、イラン製燃料油とビチューメン(アスファルト)数十万バレルを、湾内」で運んだと非難している。
船舶追跡サイト「マリントラフィック」によると、マリヴェックスは4月初旬にイランのバンダル・アッバス港に寄港し、貨物を積み込んだ後、インド西海岸のマンガルールとカルワールへ向けて出航した。
船はその後、アラビア海を通航して戻り、5月から6月初旬にかけては、オマーン沖を南北に往復する様子が、人工衛星画像で何度も撮影されている。
米中央軍司令部は、空荷のマリヴェックスは「イランの港へ航行しようとして、現行の対イラン封鎖を破った」と述べた。

画像提供, FSUI








