暴力続くエクアドル、軍が主要都市で警戒 人通り少なく学校は閉鎖

Published

ジェイムズ・グレゴリー、ウィル・グラント、BBCニュース(ロンドン、エクアドル・グアヤキル)

動画説明, 生放送中のテレビ局に武装集団が乱入 非常事態下のエクアドル

生放送中のテレビ局に武装集団が乱入するという前代未聞の暴力事件が発生したエクアドルで、いくつかの都市を兵士が警備する警戒態勢が敷かれている。

最大都市グアヤキルでは9日、覆面をした武装集団が生放送中のテレビスタジオに乱入した。また、各地でこの日、爆弾が爆発する騒ぎがあった。

国内5カ所の刑務所では、合わせて130人以上の刑務所職員が囚人に人質に取られている。

エクアドルでは7日、犯罪組織「ロス・チョネロス」のリーダー、アドルフォ・マシアス・ヴィラマール受刑者が刑務所から姿を消した。それを受けて8日、60日間の非常事態宣言が発令された。

テレビ局への乱入と、「フィト」の名前でも知られる同受刑者の逃亡との関係は不明だ。

ダニエル・ノボア大統領は、刑務所での暴動や脱走、その他の暴力事件を受けて非常事態を宣言した。当局は、一連の暴力は犯罪組織によるものだと非難している。

ノボア大統領は犯罪組織を「無力化」するよう命じた。また、エクアドルに「内部の武力紛争」が存在すると述べた。

政府は一連の暴力について、ノボア大統領が示した、犯罪組織のリーダーを収監する新たな厳重警備刑務所の建設計画に反発したものだとしている。

大統領は10日、刑務所の入所者数を減らすため、外国人受刑者、特にコロンビア人の国外追放を開始する方針を示した。

閣僚のエステバン・トーレス・コボ氏は、武装ギャングとの戦いによって多くの死傷者が出る可能性があると述べた。

BBCのニュース番組に出演した同氏は、「血なまぐさい戦いになるだろうが、これはより良い未来を手に入れるために必要な変化であり、この決断を何年も先延ばしすることはできない。今、決断しなければならない」と語った。

また、ギャングのリーダーたちは第三者の介入による解決を求めているが、「政府は誰とも交渉するつもりはない」とした。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長の報道官は、「状況の悪化を非常に憂慮している」とし、「エクアドル国民の生活に破壊的な影響を与えている」と述べた。

一方、アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、アメリカは最近の攻撃を「強く非難する」と発言。国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、米政府は「エクアドルの人々の安全と繁栄を支援する」ことを約束すると述べた。

南米エクアドルの最大都市グアヤキル市内をパトロールする兵士

画像提供, Reuters

画像説明, 南米エクアドルの最大都市グアヤキル市内をパトロールする兵士

国内の様子は

激しい攻撃の波から数時間後、グアヤキルの街は不思議な悪夢から覚めたかのような様子だった。

ここ数年で治安が悪化しているとはいえ、国営テレビ局TCのキャスターが生放送中に銃を突きつけられるという事態を予想した者はほとんどいなかっただろう。

警察は8日以降、テレビ局に乱入した者たちを含め70人を逮捕している。

大胆な攻撃の波紋は、1日たった今でも人々を避難させている。平日の割に人通りは少ない。多くの人々が、この状況が新型コロナウイルスの大流行時の生活を思い起こさせると話す。

グアヤキルと首都キトでは、数百人の兵士や戦車が街中をパトロールしている。

全国的にも学校は閉鎖されたままで、授業はオンラインで行われている。

エクアドルへの主要投資国である中国も、大使館と領事館を一時閉鎖すると発表した。刑務所当局によると、エクアドル全土で約125人の刑務官と14人の事務職員が人質に取られている。

また、8~9日にかけて犯罪者に誘拐されたという4人の警察官も、拘束されたままだ。一方で、別の警察官3人が9日遅くに解放された。

警察によると、グアヤキルでは暴力事件が続いている。9日には市内でのギャングがらみの攻撃で8人が死亡、3人が負傷した。また、近郊のノボルの町でも、警官2人が「武装犯罪者」に殺害されたという。

このほか、大学構内に銃を持った男たちが侵入する事件や、各地で爆弾の爆発があったため、それらの攻撃は互いに関連しているのではないかとの恐怖も広まっている。

夜間外出禁止

エクアドルの刑務所は近年、対立するギャングのメンバー間の暴力的な抗争に悩まされており、しばしば受刑者が虐殺される事件が発生している。

ノボア大統領の非常事態宣言によると、今回の暴力事件の背後には、ロス・チョネロスをはじめとする21の犯罪組織が関与している。

非常事態宣言では、「フィト」の逃亡後の暴力を抑制するため、夜間の外出が禁止された。また、8日に暴動が発生した少なくとも6カ所の刑務所に治安部隊が介入し、秩序を再確立しようとしている。

「フィト」の逃亡は、ノボア大統領に就任7週目にして大きな打撃を与えた。

36歳のノボア大統領は、民主的に選出されたエクアドル最年少の指導者となった。

一方で昨年の大統領選では、候補だったフェルナンド・ヴィジャヴィセンシオ議員が銃で撃たれて殺害される事件もあった。ヴィジャヴィセンシオ氏は暗殺の数日前、「フィト」から殺害予告を受けていたと報告していた。