カナダ、9月20日に総選挙実施へ 新型ウイルス対策の評価が焦点

Canada's Prime Minister Justin Trudeau speaks during a news conference at Rideau Hall after asking Governor General Mary Simon to dissolve Parliament

画像提供, AFP via Getty Images

画像説明, カナダ総督公邸リドー・ホールで記者会見に臨むジャスティン・トルドー首相
Published

カナダのジャスティン・トルドー首相(49)は15日、議会下院を解散し、9月20日に総選挙を実施すると表明した。2007年の改正選挙法で総選挙は4年に1度行われることになっており、次回選挙は2023年10月の予定だった。

トルドー首相はこの日、メアリー・サイモン総督に議会の解散を要請した。カナダの総督は、国家元首であるエリザベス英女王の代理としてカナダの国家元首としての職務を担う。議会解散の要請が拒否されることはほとんどない。

有権者が「極めて重要な瞬間」に今後の道筋について声をあげられるよう、総選挙を行う必要があると、トルドー氏は述べた。

トルドー氏率いる与党・自由党は前回の下院議会選挙(定数338)で157議席を獲得したが単独過半数に届かず、連立政権が誕生した。そのため、自身のアジェンダ(政策目標)を進めるために野党に頼らざるを得なくなった。

トルドー氏は前回選挙の1か月前に、肌の色の濃さを誇張する「ブラウンフェイス」の化粧をしていた20年近く前の写真が報じられるなどし、人気が低下した。

今回の総選挙に先立ち行われた世論調査では、自由党が過半数を獲得できる可能性が示された。

カナダは現在、新型コロナウイルスの感染の第4波に突入している。トルドー氏は、「カナダ国民は、(新型ウイルス感染症)COVID-19との闘いを終わらせる方法を選択する必要がある」と述べた。

野党側は、単に「政治的利益」のために、パンデミックの第4波が起きている中で5週間の長期的な選挙キャンペーンを呼びかけたとして、自由党を批判した。

なぜ総選挙実施を表明したのか

「政治的に見て、現政府にとってこれほど適した時期はないだろう」と、世論調査会社Abacus Dataのデイヴィッド・コレト最高経営責任者(CEO)は言う。「国民のムードは今、いい状態にある」。

同社の直近の調査によると、カナダ人の約46%が国が正しい方向に向かっていると思うと回答した。これは約5年間で最も高い値だという。

世界的な新型ウイルスの大流行は、トルドー氏の2期目の大半の議題を占めた。選挙戦でも新型ウイルス問題が焦点となるのは間違いない。

同国ではこれまでに2万6657人が死亡しているが、累計死者数が62万1605人となっているアメリカなどよりは、はるかにましな状況だ(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計、日本時間16日午後1時時点)。

それでも、パンデミックをめぐる対応にはむらがあった。

カナダは国境を閉鎖するのが遅かった。また、一部の高齢者施設では、感染流行を封じ込むために軍隊を派遣しなければならなかった。ワクチンの導入にも遅れが生じ、ワクチンの国内生産体制をめぐる疑問がトルドー氏に向けられた。

政府はパンデミック救済支援をすぐに始めたが、その結果、記録的な額の負債を抱えることとなった。

感染の第4波に突入する一方で、カナダは今のところはゆっくりと日常生活に戻りつつある。

罹患(りかん)率は昨冬のピークを下回っている。ワクチンの供給スピードも加速し、今ではワクチン接種率が世界最高水準になっている。経済は回復の兆しを見せており、各州が慎重に社会活動を再開しつつある。

「この危機的状況が、ある意味(トルドー氏にとって)政治的にプラスになっている」と、トロント大学マンク国際問題・公共政策究所のドリュー・フェイガン教授は指摘する。

一方で、「かなり状態のいい少数派政権から、過半数すれすれの多数派政府へと彼(トルドー氏)を導く」だけの「十分な勢いがある」かどうかが問題だと、フェイガン氏は言う。

選挙の焦点

今回の総選挙は、トルドー氏のパンデミック対応を評価する国民投票であると同時に、今後の復興への計画を問う投票でもある。

物価の安さや生活費も有権者の関心の的となっている。

Welcome to Lytton sign is seen as smoke rises over the mountains in Lytton, British Columbia,

画像提供, Anadolu Agency via Getty Images

画像説明, 7月にカナダの最高気温を記録したブリティッシュコロンビア州リットンで山火事が発生した

ブリティッシュコロンビア州では今夏、壊滅的な熱波と山火事が発生し、プレーリー(大平原)の一部が深刻な干ばつに見舞われたことから、気候変動対策が重要議題になるとみられる。

Abacus DataのコレトCEOによると、カナダ人の約半数が環境問題を懸念事項の上位5項目に挙げており、2年前の39%から増加している。

トルドー政権は先週末、総選挙の実施のほかに2つの大きな計画を発表した。1つは、最大2万人のアフガニスタン難民の受け入れ。アフガンでは反政府組織タリバンの進攻により、アシュラフ・ガニ政権が15日に事実上崩壊し、国外へ脱出しようとするアフガン人が殺到している。

もう1つは、連邦政府職員や航空・鉄道で移動する人を対象とした、新型ウイルスワクチン接種の義務化だ。

野党・保守党の党首はワクチン接種を推奨しているものの、ワクチン接種の義務化を支持するのかについてはあいまいな姿勢を取り続けている。

ワクチン接種の義務化は、選挙戦で分断を招く問題になるかもしれないと、コレト氏は指摘する。

「我々の追跡調査では、ワクチンを接種したカナダ人は時間がたつにつれ、未接種の人に対し、行動制限を課すことにより前向きになっていることが示されている」

野党の状況は

保守党は今回の選挙で劣勢に立たされるとみられる。新党首のエリン・オトゥール氏(48)は有権者の間であまり知名度がない。

同党は前回選挙で社会問題や環境問題で苦戦したため、LGBT(性的マイノリティー)への支援を表明したり、カーボン・プライシング(炭素の排出量に価格付けを行うこと)計画を提案するなどとして、党の魅力を高めようとしている。

15日には、オトゥール氏が財政責任について有権者に訴え、経済成長を約束した。

eader of the Conservative Party of Canada, Erin O'Toole speaks during a vigil

画像提供, Anadolu Agency via Getty Images

画像説明, 野党・保守党のエリン・オトゥール党首

左派・新民主党(NDP)のジャグメート・シン党首は2度目の選挙戦に臨むこととなる。複数の調査によると、シン氏は2019年の選挙よりも人気が高まっている。

ケベック州の主権獲得を掲げるブロック・ケベコワは、ケベック州でのみ活動しているが、議会下院で32議席を有し、依然として人気を集めている。