「メディア王」マードック氏が米FOXの会長退任へ 後任は長男
バーンド・デバスマン・ジュニア、ケイティー・ラザル文化メディア担当編集長、BBCニュース(ワシントン、ロンドン)

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米メディア界の大物ルーパート・マードック氏(92)は21日、米FOXとニューズ・コーポレーションの会長職を退任し、それぞれの名誉会長に就くと発表した。長男のラクラン・マードック氏(52)が両社の会長を引き継ぐ。
マードック氏は従業員宛てのメモの中で、自分が「別の役割」を担う「時が来た」と説明した。
マードック氏は、1996年にFOXニュースを立ち上げた。いまではアメリカで最も視聴されているテレビ・ニュースチャンネルとなっている。
マードック氏は11月中旬に両社の名誉会長に就任するという。
「わが社は私と同様に頑健だ。我々の機会は商業的課題をはるかに上回っている」と、マードック氏は書いている。「我々には、これからの数年間を楽観視する理由はいくらでもある。私は当然、それに参加するためにここにいるつもりだ」。
そして、今後も「アイデアの競争」への参加を継続すると誓った。
また、ほかのメディアは、「真実を追求するよりも政治的な物語を売り歩く」「崇高な階級」のエリートたちと「共謀」していると非難した。
長男のラクラン氏は声明で、父親は「両社に価値ある助言を提供し続ける」とした。
ラクラン氏は、マードック氏と2番目の妻アンナ・マリア・デペイスター氏の息子。億万長者のマードック氏は4度の結婚歴があり、6人の子どもがいる。その多くは家業に関わっている。
後継者選び
後継者候補は、主に次女エリザベス氏(55)、長男ラクラン氏、次男ジェイムズ氏(50)に絞られていた。
ラクラン氏は役員を務めていた1990年代後半に、後継者候補に浮上した。しかし、2005年、当時のFOXニュースのトップだったロジャー・エイルズ氏との確執により会社を去った。2014年に父親のメディア帝国に戻り、以来、幹部の座にとどまってきた。
よりリベラルな思考を持つジェイムズ・マードック氏は2020年、「特定の編集内容をめぐる意見の不一致」や会社の方向性に関する不満を理由に、ニューズ・コーポレーションの取締役を辞任した。
エリザベス・マードック氏はさまざまな要職に就いた後、自身のテレビ会社「シャイン」を設立。「マスターシェフ」や「ザ・ビゲスト・ルーザー」といった番組を制作した。

激動の年
FOXをめぐっては2021年3月、2020年米大統領選挙の報道で名誉を傷つけられたとして、投票機メーカーのドミニオン・ヴォーティング・システムズが名誉毀損で訴え、損害賠償を請求した。今年4月に7億8750万ドル(約1060億円)を支払うことで和解した。FOXにとって激動の年に権力が移行されることとなった。
別の投票機メーカー、スマートマティックも、27億ドルの損害賠償を求めてFOXを提訴している。
4月25日には、最高視聴率を誇るキャスター、タッカー・カールソン氏と「決別」すると、FOXは発表した。この決定は上層部が下したものだと報じられた。
右寄りのFOXニュースが大きな影響力を持つ米大統領選挙を約1年後に控える中、マードック氏は退任する。同ネットワークは野党・共和党候補指名を争う議員らの討論会を多数主催している。
米ジャーナリストのマイケル・ウォルフ氏は、FOXを支配する一族に関する暴露本「The Fall: The End of Fox News and the Murdoch Dynasty」(転落:FOXニュースとマードック王朝の終えん、の意味)を数日中に発売する予定。米CNNのメディア・ジャーナリスト、ブライアン・ステルター氏による2冊目のマードック氏関連本も11月14日に出版される。
ルーパート・マードック氏とは
ルーパート・マードック氏は、1950年代に母国オーストラリアでキャリアをスタートさせた。1969年にはイギリス紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドとザ・サンを買収した。
その後、ニューヨーク・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルなどアメリカのメディアを多数買収。現在も、ニューズ・コーポレーション傘下にある数百もの国内外メディアのオーナーだ。
キャリアを築く中で、災難に見舞われなかったわけではない。例えば2005年には、ソーシャルメディアサイト「マイスペース」を5億ドル以上で買収したが、その後のフェイスブックの勢いに押され、わずか3500万ドルで売却することになった。
最もダメージが大きかった出来事は、英紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドが殺人事件の被害者ミリー・ダウラーさんのボイスメールを盗聴していたことが発覚したことだった。この悪名高い、電話ハッキング・スキャンダルは、マードック氏個人にとって屈辱的な出来事だった。同氏は莫大な経済的損失を被った。会社側は、電話ハッキングの被害者に10億ポンド以上を支払ったと報じられている。
ラクラン氏の会長就任の影響は
ラクラン氏はFOXコーポレーションとノヴァ・エンターテインメントの執行役会長を務めてきた。
今回の発表を受け、FOX株が2%近く上昇した一方、ニューズ・コーポレーション株は0.6%の小幅上昇にとどまった。
企業法の専門家であるアナット・アロン=ベック教授は、ラクラン氏の昇進に対する市場の反応は、「最も強力な人物であるCEOがその役割を離れたからといって、会社のリーダーシップが脅かされることはない」ことを保証する「堅実かつ賢い」計画がFOX側にあるかどうかにかかっていると述べた。
父親の後任にラクラン氏が選ばれることは予想されていた。しかし、父親が亡くなった場合にどうなるのかは不明だ。
父マードック氏から、6人の成人した子どもたちへの株式の譲渡は、このメディア帝国の将来をめぐる争いの舞台となりかねない。

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